お香

日本で古くから使われてきたお香の原料23種類の紹介

お香の原料

お香の原料には沢山の種類がありますが、その中でも代表的なものを紹介します。アロマセラピーをご存知な方は、西洋名を見ると精油に対応できる植物が沢山あるので分かりやすいかもしれません。西洋でも東洋でも同じ香りを異なる形で使って、楽しんでいたのですね。

目次

  1. 香木
  2. 植物系原料
  3. 樹脂系原料
  4. 動物系原料
  5. 基材



香木

香木は、その木自体に香りがあるものです。一般的に沈香と白檀が香木と言われ、お香の世界の中では代表的な原料です。

沈香(じんこう)・伽羅(きゃら)

沈香は正式に沈水香木という名称です。ジンチョウゲ科の常緑高木の中の樹脂が長い年月をかけて凝結してできたものです。木自体は軽いですが、樹脂が着いた部分は重く水に沈むことから、沈水香木と呼ばれました。同じジンチョウゲ科の木が全て沈香となる訳でなく、育った環境や気候の微妙な違いから、沈香となることは奇跡とも言われます。そのためとても貴重なものとして昔から大切にされていました。そんな沈香の中でも一番最上級のものを伽羅と言います。今ではワシントン条約の規制対象種となっています。お香の原料としては、常温だと殆ど香りがないため、熱して使用するものの原料として使われます。

別名  アガーウッド
 ジンチョウゲ科
原産地  ベトナム、タイ、マレーシア、インドネシアなど
生薬としての効能  安眠作用、加温作用など

白檀(びゃくだん)

白檀はサンダルウッドとしても知られている半寄生常緑高木です。お香のなかでは最も使われる原料の一つです。この芯材を使用します。インドのマイソール地方のものが最高品質と言われ、「老山白檀」と言われます。白檀はお香の原料として一番ベースとなり、よく使われる原料です。

別名  サンダルウッド
 ビャクダン科
原産地  インド、インドネシア、オーストラリア、フィジーなど
生薬としての効能  鎮痛作用、健胃作用など

植物系原料

桂皮(けいひ)

桂皮は私たちにも馴染み深い、シナモンのことです。洋風のスイーツにも使われますが、京都の八つ橋のフレーバーなどにも使われていて、日本人にも好まれやすい香りです。お香の表現でいうと、始めは「辛」い香りから時間が経つにつれて「甘」くなっていきます。

別名  シナモン、シナニッケイ、セイロンニッケイ
 クスノキ科
原産地  中国、ベトナムなど
生薬としての効能  健胃作用など

大茴香(だいういきょう)

大茴香は、スターアニスやトウシキミ、八角としても知られ、スパイスなどにもよく用いられます。モクレン科の常緑樹です。とても華やかな香りを放ちます。わびさびを思わせる繊細な香りを作る時よりも、優美で華やかな香りを作るときにブレンドされます。

別名  スターアニス、トウシキミ、八角
 モクレン科
原産地  中国など
生薬としての効能  健胃作用、防腐作用など

丁子(ちょうじ)

丁子はクローブと呼ばれ、スパイスとしても有名な植物です。昔は金として扱われていたなど、歴史的にとても貴重なものとされていました。記録を見ると、日本の古い香りには丁子がふんだんに使われていたそうです。甘さが強い香りです。

別名  クローブ
 フトモモ科
原産地  インドネシア、サンジバルなど
生薬としての効能  健胃作用、鎮痛作用など

山奈(さんな)

山奈は、バンウコンとしても知られるショウガ科の植物です。その根茎が使われています。山奈はカレー粉の原料としても広く使われていて、誰もが口にしたことのある香辛料です。あまり強い香りではなく、お香のブレンドでは香りの隠し味的な形で使われます。

別名  バンウコン
 ショウガ科
原産地  中国など
生薬としての効能  保温作用、防虫作用など

藿香(かっこう)

藿香はシソ科の多年生植物です。西洋ではパチュリとも言われ、香水のベースとしてもよく使われます。

西洋名  パチュリ
 シソ科
原産地  インド、マレーシア、中国など
生薬としての効能  健胃作用、風邪予防、防虫作用、鎮痛作用、解熱作用など

零陵香(れいりょうこう)

零陵香は薫草とも言われ、カレーのスパイスとしても使用されています。香りがとても強く、お香の原料にするときは沢山は使用しません。しかし、独特の辛い香りは、お香のブレンドになくてはならない香りです。全体の香りをはっきりさせ、枠を付けたい時や、わびさびの世界観の中で高級感を出したい時などに使われます。

別名  薫草
 サクラソウ科
原産地  中国
生薬としての効能  鎮静作用など

排草香(はいそうこう)

排草香は様々な説があり、零陵香の根を乾燥させたものとするものもあれば、カワミドリの根を乾燥させたものと言われることもあります。香りのブレンドとしては、男性的で、深みを出すような役割があります。

別名  カワミドリ
 シソ科
原産地  インド、マレーシア、中国、台湾など
生薬としての効能  解熱作用など

木香(もっこう)

木香はワシントン条約で規制されている植物の一つでとても貴重になっています。今では中国の栽培種が原料となっています。

別名  –
 キク科
原産地  インド、中国など
生薬としての効能  防虫作用、鎮痛作用、消炎作用など

甘松(かんしょう)

甘松はスパイクナードとも知られています。とても強い、独特な香りがします。単体ではあまり好まれる香りではありませんが、ブレンドで使うと、深みを与えてくれ、お香では欠かせない香りです。

別名  スパイクナード
 オミナエシ科
原産地  中国、インドなど
生薬としての効能  健胃作用など

良姜(りょうきょう)

ショウガ科のリョウキョウの根を使用します。

別名  高良姜(コウリョウキョウ)
 ショウガ科
原産地  中国など
生薬としての効能  健胃作用、解熱作用、発汗作用など

鬱金(うこん)

ショウガ科の多年草です。根茎を使用します。スパイスや色付けとして使用されていました。平安時代には大切な香料の一つでした。

別名  ターメリック
 ショウガ科
原産地  インド、中国など
生薬としての効能  健胃作用など



樹脂系原料

樹脂原料は、木材の樹脂から取られる香料です。安息香や乳香、没薬はアロマセラピーの精油の原料としても使用されています。

安息香

安息香はベンゾインとも言われるエゴノキ科の安息香樹の樹脂です。より香りが甘く華やかなものを極上安息香と言います。香りを長く保たせるための保香材としても機能します。

西洋名  ベンゾイン
 エゴノキ科
原産地  インドネシア、ベトナムなど
生薬としての効能  鎮咳作用、鎮痛作用など

乳香

乳香はフランキンセンスとも呼ばれ、聖書にも出てくるほど古くから貴重なものとして知られています。ブレンドに使用するとやや洋風な香りになります。

別名  フランキンセンス
 カンラン科
原産地  アフリカ、アラビア、ソマリアなど
生薬としての効能  鎮痛作用、消炎作用、殺菌作用など

龍脳(りゅうのう)

本来はフタバガキ科の常緑高木から採取される白色の決勝のことを龍脳と言います。今では楠木から精製されるものが主流となっています。アロマセラピーではクスノキ科のCinnamomum camphoraはカンファーと呼ばれます。龍角散の原料にも使用されたり、習字の墨の香りづけにも使用されています。防虫剤の原料としても広く使われています。お香のブレンドには欠かせない原料です。ブレンドで使用すると、始めは強い刺激的な香りですが、時間が経つにつれて柔らかくなっていきます。

別名  ボルネオカンファー
 フタバガキ科
原産地  インドネシア、マレーシアなど
生薬としての効能  防虫作用、去痰作用など

没薬

没薬はミイラ作りの防腐剤としても使われていた、世界最古の香料の一つです。

別名  ミルラ
 カンラン科
原産地  アフリカなど
生薬としての効能  鎮静作用、鎮痛作用など

 蘇合香(そごうこう) 

マンサク科、エゴノキ科からとれる樹脂です。

西洋名  スチラックス
 マンサク科、エゴノキ科
原産地  アジア、トルコなど
生薬としての効能 鎮静作用など

動物系原料

貝香(かいこう)

貝香は、巻き貝の殻口を閉じるフタを粉末にしたものです。香りを安定させるために保香材として使用されます。香りは磯のような、だしのような香りがあります。

別名  甲香
原産地  アフリカ、中国など
生薬としての効能  胃腸の不調に

麝香(じゃこう)

麝香は、ジャコウジカの雄のホルモンです。大変貴重で高価な原料です。麝香自体の香りは強烈ですが、ブレンドすると深みを出し、とても良い香りになります。殆どの場合がムスクと言われる合成香料を使用しています。

別名  ムスク
原産地  中国、ネパール、シベリア
生薬としての効能  強心作用など

基材

椨粉(たぶこ)

主にお線香の基材(粘着剤)や抹香として用いられます。タブ樹の葉と樹皮を粉末にしたものです。

支那粉(しなこ)

椨粉と同じく、お線香の基材として使われます。椨粉より粘りが強いです。

炭粉(すみこ)

木炭を粉末にしたのもです。火をつけやすくするために使われます。練香や線香に混ぜて使用します。カビを防いだりする効果もあります。




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