初心者にもすぐわかる、精油の化学の基礎!|成分から化学的に分類
精油と化学
精油成分は、植物が葉緑体、光、水、二酸化炭素から糖分を作り、植物の内部で変換されてできた成分です。その成分は個々の精油ごとに化学的に分類することができます。精油成分を構成する要素の中心は、C(炭素)・O(酸素)・H(水素)の3つです。これらの組み合わせを見ることで、成分の特徴がわかり、精油の個性をより深く理解することができます。ここでは化学的な分析を基にした精油の分類と、その大まかな作用や特徴についてまとめています。
目次
有機化学分類と精油成分まとめ
炭化水素類
1. モノテルペン炭化水素類
CとHのみで構成された炭化水素です。柑橘系に多くみられます。揮発性が高く、トップノートの傾向があります。テルペン類は強い皮膚刺激性と抗ウイルス作用があります。
作用
殺菌作用、殺微生物作用、抗炎症作用、抗ウイルス作用、鎮痛作用、うっ滞除去作用、鎮静作用、コーチゾン作用(ステロイド作用)、性欲を抑える
精油 ※モノテルペン炭化水素類の割合が一番多いもの
アンジェリカ、エレミ、オレンジ、キャロットシード、クミン、グレープフルーツ、サイプレス、ジュニパー、セロリ、ジュニパー、ティーツリー、ナツメグ、パイン、バルサム、ビターオレンジ、ファー、ブラックペッパー、フランキンセンス、ベルガモット、マジョラム、マンダリン、ヤロウ、レモン、ローズマリー |
2. セスキテルペン炭化水素類
CとHのみで構成された炭化水素です。モノテルペンより分子量が多く、粘性があります。香りは厚く強く、長く続き、ミドル~ベースノートの傾向があります。根、木、キク科の植物から、2000以上のセスキテルペン類が分離されています。
作用
鎮痛作用、鎮静作用、健胃作用、殺菌作用、消炎作用、抗炎症作用、抗アレルギー作用、抗ヒスタミン作用、抗ウイルス作用、潜在性抗ガン作用、静菌作用、免疫刺激作用
精油 ※セキステルペン炭化水素類の割合が一番多いもの
イモーテル、イランイラン、シダーウッド、ジンジャー、スパイクナード、タジェット、シダーウッド・ヒマラヤ、ミルラ |
アルコール類
精油の中で最も有効的な分子のいくつかはアルコール類に属します。私たちの膵臓は、新陳代謝のために32種類のアルコールを生産するように、アルコール類は体に大切な要素です。主に殺菌作用、抗ウイルス作用、利尿作用、元気を与える効果があります。
3. モノテルペンアルコール
毒性、刺激がなく、安全に使用できます。
作用
抗ウイルス作用、利尿作用、抗真菌作用、殺菌作用、抗菌作用、鎮痛作用、皮膚弾力回復作用、収斂作用、強壮作用、免疫向上作用
精油 ※モノテルペンアルコールの割合が一番多いもの
コリアンダー、シトロネラ、スパイクラベンダー、ゼラニウム、ネロリ、バジル、パルマローザ、プチグレン、ペパーミント、ラバンジン、ローズ、ローズウッド |
4. セスキテルペンアルコール
モノテルペンアルコールより分子量が多く、粘性があります。毒性がなく使いやすいですが、エストロゲン作用があるため、妊娠中は避けたほうがいいです。
作用
抗ウイルス作用、利尿作用、殺菌作用、抗菌作用、抗炎症作用、抗アレルギー作用、強壮作用、免疫力向上作用、鎮静作用、エストロゲン様作用
精油 ※セキステルペンアルコールの割合が一番多いもの
サンダルウッド、パチュリ |
5. ジテルペンアルコール
Cを20個持ち、分子量が多いものです。分子量が多いほど、水蒸気蒸留法で取り出しにくくなっていきます。毒性はなく安全ですが、この中にもエストロゲン様作用が含まれているので、妊娠中は避けましょう。
作用
抗ウイルス作用、利尿作用、ホルモン調整作用、止血作用、エストロゲン様作用、消毒作用、殺菌作用
精油
クラリセージ、ジャスミン (共にメインの成分ではなく、少量含まれているのみ) |
アルデヒド類
アルデヒドとは、酸化したアルコールです。抗炎症作用、沈着作用、鎮静作用、抗ウイルス作用などをもたらします。
6. テルペンアルデヒド
揮発性が高く、酸化しやすい性質があります。強い芳香と殺菌力が特徴です。刺激が強くアレルギーを誘発する場合があります。
作用
抗ヒスタミン作用、結成溶解作用、抗真菌作用、抗菌作用、抗炎症作用、抗ウイルス作用、昆虫忌避作用、鎮痛作用、血圧降下作用
精油 ※テルペンアルデヒドの割合が一番多いもの
メリッサ、レモングラス、レモンバーベナ、レモンユーカリ |
7. 脂肪族アルデヒド
特に柑橘系(特にレモン系)の香りの特徴を左右します。
作用
鎮静作用、殺菌作用、抗ウイルス作用、消化促進作用、血圧降下作用、抗炎症作用、結石溶解作用
精油
オレンジ、ビターオレンジ、マンダリン (どれもメインではなく少量含まれているのみ) |
8. 芳香族アルデヒド
刺激が強くアレルギーを誘発する場合があります。一部のスパイスの香味成分にもなっています。
作用
強壮作用、免疫刺激作用、鎮静作用、麻酔作用、胆汁分泌促進作用、駆風作用、抗炎症作用、駆虫作用
精油 ※芳香族アルデヒドの割合が一番多いもの
シナモン・カッシャ |
ケトン類
9. ケトン類
ケトン類は傷を癒したり、粘液分泌を抑える働きをします。新しい細胞を促進する働きもあり、肌の手入れに効果的です。ケトン類を成分に持つ精油は、注意が必要な場合があります。強い粘性があり、内服すると体内に蓄積されやすく、神経毒のような作用をもたらす場合があります。まれにカンファー、セージ、ヒソップ、ペニーロイヤルは、高濃度の使用や内服、長期使用での事故があるようです。妊娠中や幼児への使用は避け、低濃度で使用しましょう。
作用
粘液溶解、脂肪分解、去痰作用、瘢痕形成作用、筋肉弛緩作用、賦活作用、昆虫忌避作用、胆汁分泌促進作用
精油 ※ケトン類の割合が一番多いもの
カンファー、キャラウェイ、スペアミント、セージ、ターメリック、タンジー、ディル、ヒソップ、ユーカリ・ディベス |
フェノール類
10. フェノール類
いい効果も、リスクも、両方強く現れる成分です。肝臓に対して毒性があることと、皮膚刺激があるので、低濃度で短期的な使用をしてください。消毒作用や抗菌作用はどの成分より強いです。薬剤として、荒れを抑えるリップクリームや鎮咳に使われます。
作用
消毒作用、抗菌作用、抗ウイルス作用、免疫力向上作用、強壮作用、駆虫作用、エストロゲン様作用、消化促進作用、駆風作用、殺虫作用、昆虫忌避作用、鎮痛作用、抗アレルギー作用、消化促進作用
精油 ※フェノール類の割合が一番多いもの
オレガノ、クローブ、シナモン、セイボリー、タイム |
フェノールエーテル類
11. フェノールエーテル類
フェノール類と同様に、肝臓に対して毒性があることと、皮膚刺激があるので、低濃度で短期的な使用をしてください。神経組織ととてもよく調和し、硬直をほぐしたり、神経のバランスをとる作用があります。
作用
防腐作用、刺激作用、去痰作用、消毒作用、抗菌作用、抗ウイルス作用、鎮痙作用、利尿作用
精油 ※フェノールエーテル類の割合が一番多いもの
アニス、タラゴン、バジル(メチルチャビコール)、パセリ、フェンネル |
エステル類
12. エステル類
エステル類は、アルコールと酸が反応して作られます。化学的に最も中性な性質をもちます。そのため、バランスや調和をもたらします。ミドルノートのフローラルでフルーティー香りが特徴です。バランスをとり、緊張をほぐしてくれます。作用が穏やかで、安全性の高い化合物です。
作用
殺菌作用、抗真菌作用、鎮静作用、抗炎症作用、鎮痙作用、強壮作用、興奮作用
精油 ※エステル類の割合が一番多いもの
イニュラ、ウィンターグリーン、カモミールローマン、クラリセージ、ジャスミン、バレリアン、ブラックスプルース、マンダリン、ラベンダー |
酸化物・オキサイド類
13. 酸化物・オキサイド類
揮発性が高く、分解されやすい性質をもちます。香りは強く、刺激も強いため、濃度に気を付けたほうがいいでしょう。
作用
去痰作用、抗炎症作用、免疫調整作用、疫粘液溶解作用、抗カタル作用
精油 ※酸化物、オキサイド類の割合が一番多いもの
カモミールジャーマン、カユプテ、カルダモン、ゲットウ、タイム・マストキナ、ニアウリ、ユーカリグロスプ、ユーカリ・スミティ、ラベンサラ、ローレル |
ラクトン類
14. ラクトン類
どの成分よりも抗炎症作用が強いです。揮発性が高く、高刺激です。柑橘系に含まれるフクロマリン類の成分は、光毒性をもたらすものがあります。妊娠中や幼児は避けましょう。
作用
粘液分泌調整作用、去痰作用、脂肪分解作用、抗痙攣作用
精油 ※ラクトン類の割合が一番多いもの
ロベージ |
カルボン酸・有機酸類
15. カルボン酸・有機酸類
酸は水に溶けると水素イオンを発生し、作用性のとても高いものです。水溶性のため、精油に含まれる量は微量となります。
作用
抗炎症作用、冷却作用
精油 ※カルボン酸、有機酸類の割合が一番多いもの
バーチ、ベンゾイン、マートル |
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