陰陽五行説|東洋医学の基本思想を3ステップで説明
陰陽五行説
陰陽五行説とは、伝統的な東洋医学の中心となる考え方です。陰陽説の始まりはBC1000年前後の中国と言われています。インドが起源のアーユルヴェーダの考えからから発展したとも言われ、アーユルヴェーダの考え方にも類似する部分があります。五行説の方が比較的新しく、最初の記録は紀元前400年前後になります。その後宗の時代(960年~)に五行説は医学に取り入れられました。陰陽の概念とも密接に関わってきます。陰陽と五行の考え方の基本を解説していきます。
※図や表以外で、東洋医学の言葉は全て[ ]の中に表しています。例えば、[心]は東洋医学での[心](しん)を表し、普通に心と書いてある場合は、通常の「こころ」を表しているとお考え下さい。そして[ ]内の言葉はまとめて東洋医学の言葉一覧のページで意味を調べられます。
目次
陰陽説
POINT1: 万物は陰と陽の2つの性質に分けられる
陰陽説とは、「宇宙の万物は全て陰と陽の二つのエネルギーで構成されている」という思想です。このとてもシンプルですが奥の深いこの理念は、東洋医学や多くの食事療法や伝統医学の基礎となっています。西洋医学の歴史にも存在します。陰陽説は、アロマセラピーやメディカルハーブ、そのほかの自然療法や代替医療と密接な関わりがあります。この理論を知っていると、より植物や自然の働きを理解しやすくなり、世界が広がります。
[陰]と[陽]の4つの関係性
[陰]と[陽]は万物が持つ性質です。二つは相対的であり、どちらか一つでは存在しません。[陰]と[陽]の関係は4つの特徴があります。この関係性は、万物が生まれて無くなっていく循環の根本的な考え方でもあります。
対立
万物には対立する2つの面([陰]と[陽])が同時に存在しています。昼と夜、光と影といったように。
互根(ごこん)
[陰陽]は、どちらか一方のみで存在することはできません。光が無ければ影も無く、影が無ければ光を認識できません。
消長(しょうちょう)
[陰陽]の割合(量)は絶えず変化しています。昼間が長い季節があったり、夜が長い季節があるように。
転化
[陰陽]の質も変化しています。昼が続いた後に、夜が来ます。これは[陽]から[陰]に性質が転化しています。「[陰]極まれば[陽]となり、[陽]極まれば[陰]となる」ということわざは転化を意味しています。
POINT2: 陰陽の具体的な性質を理解する
自然界の現象で表すと、暗闇や夜、冬は[陰]になり、昼間や夏、日差しは[陽]になります。水は[陰]ですが、蒸気になると[陽]になります。私たちの体を表すと、細胞や組織、内蔵は[陰]にあたり、エネルギーや生命力は[陽]にあたります。何が[陰]で何が[陽]になるかは相対的なもので、何を基準に見るかによって変化しますのでご注意ください。
[陰]の性質
[陰]の性質はより物質的で、固まるエネルギーであり、よりゆっくりしていて、より冷たい性質があります。
[陽]の性質
[陽]の性質は、非物質的で、より動きのあるエネルギーで、より速く、より温かい性質があります。
[陰陽]の具体的な性質一覧
[陰]と[陽]の根本的な性質をまとめています。これらの性質が根本で、そこから東洋医学のの気の流れや、[陰陽]をもとにした心理作用の理解がしやすくなります。
陰 | 陽 |
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POINT3: 陰陽の心理的な性質を理解する
陰陽の根本的な性質の理解ができると、心理的な面でも陰陽を理解しやすくなります。
[陰]の心理的性質
[陰]はより内側にある、心理的な性質があります。感情、印象、感覚などに関わります。さらに深く考えていくと、[陰]は外のものを受け入れる、受容の性質があります。観察し、許容し、適応するのが[陰]です。
[陽]の心理的性質
[陽]は意識にあがってくる、思考、分析、論理などに関わります。そして、自分を表現するのが[陽]の性質です。的確に自分を表現し、目的を明確にできます。
[陰陽]の心理的性質一覧
陰 | 陽 |
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五行説
POINT1: 万物は[木火土金水]の五元素の性質を持つ
「五行」というように、五行説は五つの元素を軸に考えます。万物は[木火土金水]の5つの元素に分けられ、それらがお互いに影響し合って宇宙が成り立っていると考えます。この5つは、アーユルヴェーダの五大元素(空、風、火、水、地)と似ていますが、違う考え方です。アーユルヴェーダの五大元素は、万物の性質を表すのに対し、五行説の5つは、自然のエネルギーや動的な力のような概念です。各五大元素の詳細は下記へ。
アーユルヴェーダの五大元素はこちらへ
POINT2: 五大元素は全てが影響し合っている
図のように、五元素はお互いに影響し合っています。となり同士の元素(→)は相生関係であり、向かい合う元素(→)は調整する相克関係となります。これらは、古代人による自然の観察にもとづいて導き出された万物の理論です。
相生関係(そうせい)
相生関係とは、相手を助けて促進する関係です。どこから始まるかはいろいろな考え方がありますが、まず[水]から始まり、右へと変化していきます。水を吸って[木]が育ちます。[火]は木によって勢いを増し、燃えた灰は[土]の養分となります。土の中では養分が固まり[金]を生じさせます。金属の表面には[水]が生じます。矢印の始まりの要素が母、矢印の先の要素が子の関係になります。
相克関係(そうこく)
相克関係とは、相手を調整する関係のことです。[水]は[火]を消す力があり、勢いを調整します。[木]は[土]の養分を吸い、または根をはり勢いを調整します。[火]は[金]を溶かすことで調整し、[土]は[水]の流れを止めます。[金]は[木]を切り落とし、調整します。このようにより勢いを増す相生関係と、調整し合う相克関係がうまく組み合わさって自然界のバランスが取れています。私たちもこのバランスに沿って生きることで、スムーズに生きられると考えられています。
相乗
過剰な相克関係を相乗といいます。→の部分の勢いが強すぎたり、足りなすぎたりしてバランスが崩れた状態です。[水]の勢いがありすぎると、[火]が少なくなりすぎます。[火]が少ないので、[水]の勢いが更に増してしまっているような状態です。
相侮(反克・反侮)
→の方向が逆になってしまう現象を相侮、もしくは反克、反侮といいます。通常は、[水]が[火]の勢いを抑え、[土]が[水]の勢いを抑える関係です。しかし[水]の勢いがありすぎてしまうと、[水]が[土]をも抑えてしまう関係になってしまいます。
POINT3: 体の機能や心の状態、自然の摂理など、万物が五元素に対応する
あらゆるものが五元素の性質を持ち、その中でも体の機能や心の状態は密接に結びついています。下記の表は五行配当表と言い、その例になります。
五臓・五腑:体の機能
五元素の体の機能を表す概念を[五臓]といいます。[肝心脾肺腎]の五種類があり、それぞれ五元素の[木火土金水]に対応しています。西洋医学で言う腎臓、肝臓、心臓・・・などの臓器よりも広い意味を持っています。例えば、私たちの体の[水]のエネルギーに不調があるとき、それに対応する[腎]の機能が低下するという考え方です。[五臓]を補佐する機能に[五腑(六腑)]という概念もあり、[五臓]に対応する腑があります。詳細は下記リンクへ。
五志・五神:心の状態
五元素に対応する、心の状態を[五志]や[五神]で表します。[五志]は特に感情で、[怒喜思悲憂恐驚]があり、それぞれ五元素の[木火土金水]に対応しています。[五神]は精神活動を表し、[魂神意魄志]が対応します。例えば、私たちの体の[水]のエネルギーに不調があったり、[腎]の機能が低下していると、感情面では[悲]をもたらします。精神面では[志]に影響をもたらします。[五志]と[五神]の詳細は下記のリンクへ。
五気・五季
[五気]は気候の移り変わり、[五季]は季節の移り変わりを表しています。詳細は下記リンクへ。
五色
[五色]は色の対応です。例えば、[肺]に対応するのは[白]ですが、[肺]のバランスをとるために、[白]色の食材が効果的です。
五味
[五味]は味覚のことです。例えば、[脾]の不調には対応する[甘]が効果的なことが多いです。詳細は下記リンクへ。
五根・五支・五体・五液
これらの要素は、体のどの部分が対応しているかになります。[五根]は体の表面に現れる穴のことです。[五支]は不調が現れる場所、[五体]は対応する体の部位です。[五液]は対応する体液のことです。例えば、[肝]の不調は、[目][爪][筋]に現れます。これらは五臓六腑の説明の中に出てくるので、詳細は五臓六腑のページへ。
五方・五能・五刻
これらは自然の要素です。[五方]は方角、[五能]は自然のリズム、[五刻]は時間を表します。
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