祛湿剤の漢方薬|東洋医学の薬剤
祛湿剤一覧
祛湿剤(きょしつざい)とは、[水湿]の邪による不調を改善に使用する漢方薬です。湿気の多い日本では[水湿]邪が原因の不調が多いため、漢方にもたくさんの種類があります。漢方薬にはいろいろな効能があるので、分類方法には場合によって違いがあるかと思います。各漢方薬の詳細は下記をご覧ください。副作用や組み合わせによる注意点がある場合が殆どですがここには記載しておりません。実際に使用する場合は、必ず専門の医師に相談してお使いください。
※図や表以外で、東洋医学の言葉は全て[ ]の中に表しています。例えば、[心]は東洋医学での[心](しん)を表し、普通に心と書いてある場合は、通常の「こころ」を表しているとお考え下さい。そして[ ]内の言葉はまとめて東洋医学の言葉一覧のページで意味を調べられます。
目次
1.胃苓湯(いれいとう)
平胃散と五苓散を合わせた処方です。冷たいものを取り入れた時の胃もたれや下痢に用いられます。
八綱弁証 | 裏証・寒証 |
気血水弁証 | 水滞 |
臓腑弁証 | 脾、腎 |
組成
蒼朮、陳皮、沢瀉、白朮、厚朴、猪苓、茯苓、桂皮、大棗、甘草、生姜、(芍薬、縮砂、黄連) |
体質
体力中等度
適応症
水様性の下痢、嘔吐、口渇、尿量が少ないといった症状がある人に向いています。そのような人の食あたり、暑気あたり、冷え腹、急性胃腸炎、腹痛に。
2.茵蔯蒿湯(いんちんこうとう)
八綱弁証 | 裏証・熱証・実証 |
気血水弁証 | 水滞 |
臓腑弁証 | 肝 |
組成
茵蔯蒿、山梔子、大黄 |
体質
体力中等度以上
適応症
口渇、尿量が少ない、便秘といった症状がある人に向いています。そのような人の蕁麻疹、口内炎、湿疹、皮膚炎、皮膚のかゆみに。
3.茵蔯五苓散(いんちんごれいさん)
五苓散に茵蔯蒿を加えたものです。五苓散と同様、水分を調整する作用があります。さらに茵蔯蒿の消炎作用が加わり、皮膚の蕁麻疹湿疹、アトピーなどに用いられます。茵蔯蒿湯だと大黄によって下痢になってしまう人や胃腸虚弱の人に向きます。
八綱弁証 | 裏証・熱証・実証 |
気血水弁証 | 水滞 |
臓腑弁証 | 肝、脾 |
組成
沢瀉、猪苓、桂皮、茯苓、蒼朮(白朮でも可)、茵蔯蒿 |
体質
体力中等度以上
適応症
口渇、尿量が少ないといった症状がある人に向いています。そのような人の嘔吐、蕁麻疹、二日酔い、むくみに。
4.越婢加朮湯(えっぴかじゅつとう)
上半身のむくみと熱感の不調に使われます。冷えのある人には向きません。
八綱弁証 | 表証・熱証・実証 |
気血水弁証 | 水滞 |
臓腑弁証 | 脾、肺、腎 |
組成
石膏、麻黄、白朮(蒼朮でも可)、大棗、甘草、生姜 |
体質
体力中等度以上
適応症
むくみ、口渇、汗が出る、尿量が少ないといった症状がある人に向いています。そのような人の関節痛、むくみ、関節炎、湿疹、夜尿症、目のかゆみや痛みに。
5.桂枝加朮附湯(けいしかじゅつぶとう)
桂枝湯に白朮と炮附子を加えた処方です。桂枝湯は体を温め、寒気を取ってかぜの症状を緩和させますが、炮附子によって体を更に温め、白朮によって湿気を取り除く作用がプラスされます。気温の低下や低気圧によって悪化する関節痛や神経痛に効果的です。また、冷え性で、冷房や冬場に手足や関節が痛む時にも使われます。
八綱弁証 | 裏証・表証・寒証・虚証 |
気血水弁証 | 水滞 |
臓腑弁証 | 肺、脾 |
組成
桂皮、芍薬、大棗、生姜、甘草、蒼朮(白朮でも可)、炮附子 |
体質
体力虚弱
適応症
汗が出る、手足が冷えてこわばる、時に尿量が少ないといった症状がある人に向いています。そのような人の関節痛、神経痛に。
6.桂枝加苓朮附湯(けいしかりょうじゅつぶとう)
桂枝加朮附湯に茯苓を加えた処方です。それによって利水作用と鎮静作用がプラスされ、むくみを緩和する作用が強化されます。冷えや湿度によって悪化する手足の痛みやこわばりに使われます。
八綱弁証 | 裏証・表証・寒証・実証 |
気血水弁証 | 水滞 |
臓腑弁証 | 肺、脾 |
組成
桂皮、芍薬、大棗、生姜、甘草、蒼朮(白朮でも可)、炮附子、茯苓 |
体質
体力虚弱
適応症
手足が冷えてこわばる、尿量が少ない、時に動悸・めまい・筋肉のびくつきといった症状がある人に向いています。そのような人の関節痛、神経痛に。
7.鶏鳴散加茯苓(けいめいさんかぶくりょう)
下肢の[気]と[津液]の流れを緩和させます。
八綱弁証 | 裏証・寒証・実証 |
気血水弁証 | 気滞、水滞 |
臓腑弁証 | 腎 |
組成
檳榔子、木瓜、橘皮、蘇葉、桔梗、呉茱萸、生姜、茯苓 |
体質
体力中等度
適応症
下肢の倦怠感、ふくらはぎの緊張・圧痛に。
8.堅中湯(けんちゅうとう)
桂枝湯に半夏と茯苓を加えた処方です。
八綱弁証 | 裏証・寒証・虚証 |
気血水弁証 | 水滞 |
臓腑弁証 | 脾 |
組成
半夏、茯苓、桂皮、大棗、芍薬、甘草、乾姜(生姜でも可) |
体質
体力虚弱
適応症
胃に水がたまる感じがする人の、慢性胃炎、腹痛に。
9.香砂平胃散(こうしゃへいいさん)
平胃散に香附子と縮砂を加え、[気]を巡らせる作用をプラスした処方です。
八綱弁証 | 裏証・実証 |
気血水弁証 | 気虚、水滞 |
臓腑弁証 | 脾 |
組成
香附子、縮砂、厚朴、陳皮、蒼朮(白朮でも可)、大棗、生姜、甘草、(藿香) |
体質
体力中等度
適応症
食べ過ぎて胃がもたれる傾向がある人の、食欲異常、食欲不振、急性・慢性胃炎、消化不良に。
10.香砂養胃湯(こうしゃよういとう)
胃腸が虚弱の人の慢性的な食欲不振、小食、胃もたれ、つかえなどに使われます。香砂六君子湯より[気]を巡らせる作用が強いです。
八綱弁証 | 裏証・実証・虚証 |
気血水弁証 | 気虚、気滞、水滞 |
臓腑弁証 | 脾 |
組成
白朮、茯苓、蒼朮、厚朴、陳皮、香附子、白豆蒄(小豆蔲で代用可)、人参、木香、縮砂、甘草、大棗、生姜 |
体質
体力虚弱
適応症
胃が弱い、胃腸虚弱、慢性胃腸炎、食欲不振に。
11.五淋散(ごりんさん)
膀胱炎の処方です。同じ膀胱炎の処方の猪苓湯より、抗炎症、利尿、補血の作用が強いです。補血作用により、慢性の泌尿器系の症状改善や、血尿、尿管結石の排石にも使われます。
八綱弁証 | 裏証・熱証・実証 |
気血水弁証 | 血熱、水滞 |
臓腑弁証 | 腎 |
組成
茯苓、当帰、黄苓、甘草、芍薬、山梔子、(地黄、沢瀉、木通、滑石、車前子) |
体質
体力中等度
適応症
頻尿、排尿痛、残尿感、尿のにごりに。
12.五苓散(ごれいさん)
体の水分量の調整をしてくれます。停滞している水分は血管の中に取り込みむくみを改善します。水分が不足している場合は水分を届けて潤します。要らない水分は排出してくれます。[湿邪]による頭痛やめまいを緩和する作用もあります。口渇を伴うむくみ、嘔吐、下痢、二日酔い、暑気あたりなどに用います。
八綱弁証 | 裏証・表証・寒証・実証 |
気血水弁証 | 水滞 |
臓腑弁証 | 腎、脾 |
組成
沢瀉、茯苓、猪苓、蒼朮(白朮でも可)、桂皮 |
体質
–
適応症
のどが渇く、尿量が少ない、などの症状と、めまい・吐き気・嘔吐・腹痛・頭痛・むくみのどれかの症状も伴う場合に向いています。そのような人の水様性下痢、急性胃腸炎([しぶり腹]の場合は除く)、暑気あたり、頭痛、むくみ、二日酔いに。
13.小半夏加茯苓湯(しょうはんげかぶくりょうとう)
妊娠中のつわりによく使われる処方です。胃が冷えている場合は、乾姜人参半夏丸を使います。
八綱弁証 | 裏証・実証 |
気血水弁証 | 気逆、水滞 |
臓腑弁証 | 脾 |
組成
半夏、生姜、茯苓 |
体質
–
適応症
[悪心]、嘔吐、つわり、胃炎に。
14.四苓湯(しれいとう)
五苓散から桂皮を除いた処方です。五苓散と水分を調整する機能は同じですが、四苓湯は体を温める桂皮が無いので、より身体の熱感やほてりが強い場合に向いています。
八綱弁証 | 裏証・実証 |
気血水弁証 | 水滞 |
臓腑弁証 | 脾、腎 |
組成
沢瀉、茯苓、蒼朮(白朮でも可)、猪苓 |
体質
–
適応症
のどが渇いて水を飲んでも尿量が少ない場合で、吐き気・嘔吐・腹痛・むくみのいずれかを伴う人に向きます。そのような人の[暑気あたり]、急性胃腸炎、むくみに。
15.真武湯(しんぶとう)
冷えによる下半身のむくみ、消化機能の低下に使われます。冷えや低気圧によって悪化する関節痛や腰痛にも向きます。
八綱弁証 | 裏証・寒証・虚証 |
気血水弁証 | 水滞 |
臓腑弁証 | 心、脾、腎 |
組成
茯苓、生姜、芍薬、附子末、白朮(蒼朮でも可) |
体質
体力虚弱
適応症
冷え、全身倦怠感、時に下痢・腹痛・めまいといった症状がある人に向いています。そのような人の下痢、急性・慢性胃腸炎、胃腸虚弱、めまい、動悸、かぜ、むくみ、湿疹、皮膚炎、皮膚のかゆみに。
16.銭氏白朮散(せんしびゃくじゅつさん)
四君子湯をベースに、藿香と葛根をプラスしています。[気虚]や胃腸虚弱の人のための慢性の嘔吐や下痢の処方です。かぜの時の嘔吐や下痢にも使用します。藿香や木香は香りが高く、[脾]を目覚めさせて消化機能を高めてくれます。
八綱弁証 | 裏証・寒証・実証・虚証 |
気血水弁証 | 気虚、水滞 |
臓腑弁証 | 脾 |
組成
白朮、茯苓、葛根、人参、木香、甘草、藿香 |
体質
体力虚弱
適応症
嘔吐、下痢、時に口渇や発熱がある人に向いています。そのような人のかぜの際の嘔吐、下痢、小児の消化不良に。
17.大防風湯(だいぼうふうとう)
十全大補湯をベースに作られています。[気血]不足の人の慢性的な手足や関節の腫れ、痛み、しびれに用いられます。
八綱弁証 | 裏証・寒証・虚証 |
気血水弁証 | 水滞、瘀血、血虚 |
臓腑弁証 | 肝、脾 |
組成
黄耆、甘草、地黄、羌活、芍薬、牛膝、大棗、当帰、人参、杜仲、生姜(乾姜でも可)、防風、附子末、川芎、白朮(蒼朮でも可) |
体質
–
適応症
関節が腫れて痛む、麻痺や強直して曲げにくい場合の、下肢の慢性関節リウマチ、慢性関節炎、痛風に。
18.猪苓湯(ちょれいとう)
急性・慢性の膀胱炎の処方です。五苓散から桂皮を除き、滑石を加えた処方です。排尿困難、排尿痛、残尿感、頻尿などの症状に用います。炎症の症状が安定した後は、五苓散や清心蓮子飲に変更していく場合があります。五淋散は膀胱炎のより強い症状に向きます。
八綱弁証 | 裏証・熱証・実証 |
気血水弁証 | 水滞 |
臓腑弁証 | 腎 |
組成
猪苓、茯苓、沢瀉、滑石、阿膠 |
体質
–
適応症
排尿異常、時に口渇がある場合の、排尿困難、排尿痛、残尿感、頻尿、むくみに。
19.猪苓湯合四物湯(ちょれいとうごうしもつとう)
膀胱炎に使われる猪苓湯に四物湯を合わせ、[補血]作用をプラスした処方です。
八綱弁証 | 裏証・熱証・実証・虚証 |
気血水弁証 | 血虚、水滞、血熱 |
臓腑弁証 | 腎、肝 |
組成
当帰、芍薬、川芎、地黄、猪苓、茯苓、沢瀉、滑石、阿膠 |
体質
胃腸障害が無い人
適応症
皮膚の乾燥、色つやが悪い、排尿異常、口渇といった症状がある人に向いています。そのような人の排尿困難、排尿痛、残尿感、頻尿に。
20.二朮湯(にじゅつとう)
頸部、体幹、手足に溜まった[痰飲]を除去する処方です。手足や関節の痛み、しびれがあり、湿度が高まると悪化し、むくみやだるさを感じる場合に用います。
八綱弁証 | 裏証・寒証・実証 |
気血水弁証 | 気滞、水滞 |
臓腑弁証 | 脾、肝 |
組成
蒼朮、白朮、茯苓、陳皮、半夏、天南星、威霊仙、羌活、黄苓、香附子、生姜、甘草 |
体質
体力中等度
適応症
肩や上腕などに痛みがある人の四十肩、五十肩に。
21.不換金正気散(ふかんきんしょうきさん)
平胃散に藿香と半夏を加えた処方です。[水滞]による胃腸の働きの低下を改善します。かぜによる胃腸の症状には藿香正気散が向いています。
八綱弁証 | 裏証・実証 |
気血水弁証 | 気虚、水滞 |
臓腑弁証 | 脾 |
組成
蒼朮(白朮でも可)、厚朴、陳皮、大棗、生姜、半夏、甘草、藿香 |
体質
体力中等度
適応症
胃もたれ、食欲がない、ときに吐き気といった症状がある人に向いています。そのような人の急性・慢性胃腸炎、胃腸虚弱、消化不良、食欲不振、消化器症状のあるかぜに。
22.茯苓飲(ぶくりょういん)
[気虚]の処方の代表である四君子湯をベースに、甘草を使わない処方です。甘草はむくみやすい人には向きませんが、茯苓飲には含まれないので、[水滞]の症状もある[脾]の[気虚]に向いています。胸腹部に水分が停滞することで生じる胃の張り、つかえ、お腹がぽちゃぽちゃする、などの症状を、水分を取り除き[補気]することで改善します。
八綱弁証 | 裏証・寒証・実証・虚証 |
気血水弁証 | 気虚、気滞、水滞 |
臓腑弁証 | 脾 |
組成
茯苓、白朮(蒼朮でも可)、人参、生姜、陳皮、枳実 |
体質
体力中等度以下
適応症
吐き気、胸やけ、上腹膨満感、尿量が少ないといった症状がある人に向いています。そのような人の胃炎、神経性胃炎、胃腸虚弱、胸やけに。
23.茯苓飲加半夏(ぶくりょういんかはんげ)
茯苓飲に半夏を加えた処方です。それにより、吐き気や胸やけの症状に対してより効果的です。
八綱弁証 | 裏証・寒証・実証・虚証 |
気血水弁証 | 気虚、気逆、水滞 |
臓腑弁証 | 脾 |
組成
茯苓、白朮(蒼朮でも可)、人参、生姜、陳皮、枳実、半夏 |
体質
体力中等度以下
適応症
吐き気や胸やけが強い、上腹膨満感、尿量が少ないといった症状がある人に向いています。そのような人の胃炎、神経性胃炎、胃腸虚弱、胸やけに。
24.茯苓飲合半夏厚朴湯(ぶくりょういんごうはんげこうぼくとう)
茯苓飲と半夏厚朴湯を組み合わせた処方です。両方の使用目的が組み合わさった効果があります。
八綱弁証 | 裏証・寒証・実証・虚証 |
気血水弁証 | 気虚、気逆、水滞 |
臓腑弁証 | 脾 |
組成
茯苓、白朮(蒼朮でも可)、人参、生姜、陳皮、枳実、半夏、厚朴、蘇葉 |
体質
体力中等度以下
適応症
気分が憂鬱、咽喉食道部に異物感がある、時に動悸・めまい・吐き気・胸やけ・上腹膨満感がある、尿量が少ないといった症状がある人に向いています。そのような人の不安神経症、神経性胃炎、つわり、胸やけ、胃炎、しわがれ声、のどのつかえ感に。
25.茯苓沢瀉湯(ぶくりょうたくしゃとう)
消化機能が低下し、[胃]に水分が溜まって繰り返し嘔吐する場合、そしてその後に喉が渇いて水が飲みたくなる場合に用いられます。利水作用もありますが、胃腸の消化吸収を促す作用が特徴です。
八綱弁証 | 裏証・寒証・虚証 |
気血水弁証 | 水滞 |
臓腑弁証 | 脾 |
組成
茯苓、沢瀉、白朮(蒼朮でも可)、桂皮、甘草、生姜 |
体質
体力中等度以下
適応症
胃もたれ、[悪心]、嘔吐のいずれかの症状があり、口渇がある場合の、胃炎、胃腸虚弱に。
26.分消湯(ぶんしょうとう)
胃苓湯に[気]を巡らせる作用をプラスした処方です。[気血]の不足の無い人の、軽度のむくみに有効です。特に、胸腹部に溜まった水分が、便秘や排尿困難の為に排出できず、体内に溜まっている場合に。
八綱弁証 | 裏証・実証 |
気血水弁証 | 気滞、水滞 |
臓腑弁証 | 脾、腎 |
組成
蒼朮、白朮、茯苓、陳皮、厚朴、香附子、猪苓、沢瀉、枳実、大腹皮、縮砂、木香、生姜、灯心草 |
体質
体力中等度以上
適応症
尿量が少ない、ときにみぞおちがつかえる、便秘といった症状がある人に向いています。そのような人のむくみ、排尿困難、腹部膨満感に。
27.平胃散(へいいさん)
食生活の乱れや湿気の多い環境で起こる胃腸の不調に使われます。平胃散がベースに作られたものを正気散(しょうきさん)と言い、藿香正気散や不換金正気散などがあります。
八綱弁証 | 裏証・実証 |
気血水弁証 | 気滞、水滞 |
臓腑弁証 | 脾 |
組成
蒼朮(白朮でも可)、厚朴、陳皮、大棗、甘草、生姜 |
体質
体力中等度以上
適応症
胃もたれ、消化不良、ときに吐き気、食後にお腹が鳴る、下痢の傾向がある人に向いています。そのような人の食べ過ぎによる胃もたれ、急性・慢性胃腸炎、消化不良、食欲不振に。
28.防已黄耆湯(ぼういおうぎとう)
水太りの傾向の人のための処方です。疲れやすいなどの[気虚]の症状と、関節の腫れや痛み、むくみなどの[水滞]の症状がある場合に向いています。
八綱弁証 | 裏証・表証・実証・虚証 |
気血水弁証 | 気虚、水滞 |
臓腑弁証 | 脾 |
組成
防已、黄耆、白朮(蒼朮 白朮(蒼朮でも可)、甘草、生姜、大棗 |
体質
体力中等度以下
適応症
疲れやすい、汗をかきやすいといった症状がある人に向いています。そのような人の肥満に伴う関節の腫れと痛み、むくみ、多汗症、水太りに。
29.防已茯苓湯(ぼういぶくりょうとう)
手足がむくみと冷え、さらに違和感がある場合に向いています。違和感とは、痛み、しびれ、筋肉がぴくぴくする、むずむず、震えなどがあげられます。つるほどの痛みはありません。防已黄耆湯とも似ていますが、防已茯苓湯は[気虚]の状態が無い場合に用います。
八綱弁証 | 裏証・寒証・虚証・陽虚 |
気血水弁証 | 水滞 |
臓腑弁証 | 脾、腎 |
組成
防已、黄耆、桂皮、茯苓、甘草 |
体質
体力中等度以下
適応症
手足のむくみ、冷えといった症状がある人に向いています。そのような人の手足の疼痛やしびれ、むくみ、めまい、慢性下痢に。
30.麻杏薏甘湯(まきょうよくかんとう)
麻黄湯の桂皮を薏苡仁に替えた処方です。それにより、[水滞]を取り除く作用が強くなっています。冷えや湿度の上昇によって悪化する、全身の筋肉や関節のはれ、いたみ、しびれに使われます。湿度の高いところで汗をかき、その後冷えるという人も向いています。防已黄耆湯とも似ていますが、麻杏薏甘湯は発汗する場合は使いません。
八綱弁証 | 表証・寒証・実証 |
気血水弁証 | 水滞 |
臓腑弁証 | 肺 |
組成
麻黄、杏仁、薏苡仁、甘草 |
体質
体力中等度
適応症
関節痛、神経痛、筋肉痛、いぼ、手足の湿疹や皮膚炎に。
31.木防已湯(もくぼういとう)
八綱弁証 | 裏証・熱証・虚証 |
気血水弁証 | 気滞、水滞 |
臓腑弁証 | 肺、腎 |
組成
石膏、桂皮、防已、人参(竹節人参でも可) |
体質
–
適応症
みぞおちがつかえて堅い、顔色が蒼黒い、[喘鳴]、呼吸が切迫、下半身のむくみ、尿の量が少ない、[口渇]といった症状がある人に向いています。そのような人の心臓病、腎臓病、脚気に。
32.薏苡仁湯(よくいにんとう)
筋肉や関節のはれ、痛み、しびれのための処方です。[血虚]による筋肉や腱のはり、こわばり、[水滞]による腫れといった症状にも用います。
八綱弁証 | 裏証・表証・寒証・実証 |
気血水弁証 | 水滞 |
臓腑弁証 | 肺、脾、肝 |
組成
薏苡仁、麻黄、蒼朮(白朮でも可)、桂皮、当帰、芍薬、甘草 |
体質
体力中等度
適応症
関節痛、筋肉痛、神経痛に。
33.苓甘姜味辛夏仁湯(りょうかんきょうみしんげにんとう)
薄い水のような鼻水、薄い痰が多いせきなどに使用します。小青竜湯に使用目的が似ていますが、苓甘姜味辛夏仁湯麻黄が入っていないので、胃腸が弱い人、[陽虚]や[血虚]がある場合にも使用できます。
八綱弁証 | 裏証・寒証・虚証 |
気血水弁証 | 水滞 |
臓腑弁証 | 肺、脾 |
組成
杏仁、乾姜(生姜でも可)、半夏、甘草、茯苓、細辛、五味子 |
体質
体力虚弱
適応症
貧血、冷え性の人の、気管支炎、気管支ぜんそくに。
34.苓姜朮甘湯(りょうきょうじゅつかんとう)
腰の冷え、重い腰、腰や手足の冷えによく用いられます。
八綱弁証 | 裏証・寒証・陽虚 |
気血水弁証 | 水滞 |
臓腑弁証 | 脾、腎 |
組成
茯苓、乾姜、白朮(蒼朮でも可)、甘草 |
体質
体力中等度以下
適応症
腰から下肢にかけての冷えと痛み、尿量が多いといった症状がある人に向いています。そのような人の腰痛、腰の冷え、夜尿症、神経痛に。
35.苓桂甘棗湯(りょうけいかんそうとう)
八綱弁証 | 裏証・寒証・陽虚 |
気血水弁証 | 水滞、気逆 |
臓腑弁証 | 脾、心 |
組成
茯苓、桂皮、大棗、甘草 |
体質
体力中等度以下
適応症
のぼせ、動悸、神経の高ぶりといった症状がある人に向いています。そのような人の精神不安や動悸に。
36.苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう)
みぞおちに水分が停滞することによっておこる、胸の脇の張り、めまい、立ち眩み、息切れ、動悸などに処方されます。不安などの精神症状を伴う場合もあります。
八綱弁証 | 裏証・寒証・陽虚 |
気血水弁証 | 水滞 |
臓腑弁証 | 脾 |
組成
茯苓、桂皮、白朮(蒼朮でも可)、甘草 |
体質
体力中等度以下
適応症
めまい、ふらつき、時にのぼせや動悸といった症状がある人に向いています。そのような人の立ちくらみ、めまい、頭痛、耳鳴り、動悸、息切れ、神経症、神経過敏に。
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