補血剤・補陰剤・気血双補剤の漢方薬|東洋医学の薬剤
補血剤・補陰剤・気血双補剤一覧
補血剤(ほけつざい)とは、[血]を補って[血虚]を改善する漢方薬です。補陰剤(ほいんざい)とは、[陰虚]によって生じた[虚熱]を改善する漢方薬です。気血双補剤(きけつそうほざい)は、[気]と[血]を同時に補う漢方薬です。漢方薬にはいろいろな効能があるので、分類方法には場合によって違いがあるかと思います。各漢方薬の詳細は下記をご覧ください。副作用や組み合わせによる注意点がある場合が殆どですがここには記載しておりません。実際に使用する場合は、必ず専門の医師に相談してお使いください。
※図や表以外で、東洋医学の言葉は全て[ ]の中に表しています。例えば、[心]は東洋医学での[心](しん)を表し、普通に心と書いてある場合は、通常の「こころ」を表しているとお考え下さい。そして[ ]内の言葉はまとめて東洋医学の言葉一覧のページで意味を調べられます。
目次
補血剤 補陰剤 気血双補剤 |
補血剤
1.四物湯(しもつとう)
[血虚]のための基本的な処方です。婦人科系の不調に良い漢方は殆どが四物湯をベースにしています。[血虚]による月経量減少、無月経、更年期障害、冷え性、皮膚の乾燥などに向きます。地黄が入っているため、胃腸が弱い人は注意が必要です。
八綱弁証 | 裏証・虚証 |
気血水弁証 | 血虚 |
臓腑弁証 | 肝、心 |
組成
地黄、当帰、芍薬、川芎 |
体質
体力虚弱、胃腸障害のない人
適応症
冷え性、皮膚が乾燥・色つやが悪いといった症状がある人に向いています。そのような人の月経不順、月経異常、更年期障害、血の道症(女性ホルモンのバランスが原因の精神的・身体的症状)、冷え性、しもやけ、しみ、貧血、産後や流産後の疲労回復に。
補陰剤
1.滋陰降火湯(じいんこうかとう)
長引く空咳のための処方です。[陰虚]が[肺]と[腎]に及んでいる状態です。そのため乾燥した咳などの症状にくわえて、ほてりや熱感、寝汗などが生じています。
八綱弁証 | 裏証・熱証・虚証・陰虚 |
気血水弁証 | 津虚 |
臓腑弁証 | 肺、腎 |
組成
地黄、天門冬、麦門冬、当帰、芍薬、陳皮、白朮あるいは蒼朮、知母、黄柏、甘草、(大棗、生姜) |
体質
体力虚弱
適応症
のどに潤いが無い、痰がきれにくい、咳き込む、皮膚が浅黒く乾燥、便秘の傾向がある人に向いています。そのような人の気管支炎、咳に。
2.滋陰至宝湯(じいんしほうとう)
長引く空咳のための処方です。ほてり、のぼせ、抑うつ、イライラなどの精神症状がある場合にも使えます。
八綱弁証 | 裏証・熱証・虚証・陰虚 |
気血水弁証 | 津虚 |
臓腑弁証 | 肺、腎 |
組成
当帰、芍薬、白朮あるいは蒼朮、茯苓、陳皮、柴胡、知母、香附子、地骨皮、麦門冬、貝母、薄荷、甘草 |
体質
体力虚弱
適応症
慢性の咳、痰、気管支炎に。
3.六味地黄丸(ろくみじおうがん)
[腎]の[陰虚]の基本処方です。
八綱弁証 | 裏証・熱証・虚証・陰虚 |
気血水弁証 | – |
臓腑弁証 | 肝、腎 |
組成
地黄、山茱萸、山薬、沢瀉、茯苓、牡丹皮 |
体質
体力中等度以下
適応症
疲れやすい、尿量少ないまたは多尿、時に手足がほてる、[口渇]といった症状がある人に向いています。そのような人の排尿困難、残尿感、頻尿、むくみ、かゆみ、夜尿症、しびれに。
気血双補剤
1.胃風湯(いふうとう)
もともと胃腸が弱い人が、冷たいものを食べたり、冬にかぜをひいたりしていちょうが冷えることが原因でおこる下痢に向いています。温めながら[気]と[血]を補います。
八綱弁証 | 裏証・寒証・虚証 |
気血水弁証 | 気虚、血虚 |
臓腑弁証 | 脾 |
組成
当帰、芍薬、川芎、人参、白朮、茯苓、桂皮、粟 |
体質
体力中等度以下
適応症
顔色が悪い、食欲がない、疲れやすいといった症状がある人に向いています。そのような人の急性・慢性胃腸炎、冷えによる下痢に。
2.加味帰脾湯(かみきひとう)
帰脾湯に山梔子と柴胡を加えた処方です。
八綱弁証 | 裏証・虚証 |
気血水弁証 | 気虚、血虚 |
臓腑弁証 | 心、脾、肝 |
組成
人参、黄耆、当帰、竜眼肉、白朮(蒼朮でも可)、木香、茯苓、遠志、酸棗仁、生姜、甘草、大棗、柴胡、山梔子、(牡丹皮) |
体質
体力中等度以下
適応症
心身が疲れる、血色が悪い、時に熱感があるといった症状がある人に向いています。そのような人の貧血、不眠症、精神不安、神経症に。
3.帰脾湯(きひとう)
[気虚]や胃腸虚弱の人は、過労や心労によって[心]の[血虚]になった場合に用います。そのため、倦怠感などの[気虚]の症状に加え、不安、動悸、不眠、多夢などの[心]の症状が出ている状態です。
八綱弁証 | 裏証・虚証 |
気血水弁証 | 気虚、血虚 |
臓腑弁証 | 心、脾 |
組成
人参、黄耆、当帰、竜眼肉、白朮(蒼朮でも可)、木香、茯苓、遠志、酸棗仁、甘草、大棗、生姜 |
体質
体力中等度以下
適応症
心身が疲れる、血色が悪いといった症状がある人に向いています。そのような人の貧血、不眠症、精神不安、神経症に。
4.炙甘草湯(しゃかんぞうとう)
過労や心労によって、疲れやストレスを感じ、動悸、息切れと言った症状がある場合に用います。
八綱弁証 | 裏証・虚証・陰虚 |
気血水弁証 | 気虚、血虚 |
臓腑弁証 | 心 |
組成
炙甘草、人参、大棗、地黄、麦門冬、麻子仁、生姜、桂皮、阿膠 |
体質
体力中等度以下
適応症
疲れやすい、時に手足のほてりがある人に向いています。そのような人の動悸、息切れ、脈のみだれに。
5.十全大補湯(じゅうぜんだいほとう)
四君子湯と四物湯に桂皮と黄耆を加えた処方です。[補気]と[補血]の代表処方です。病後、術後、産後、疲労などでおこる[気血両虚]の状態に広く使われます。人参養栄湯も似ていますが、より呼吸器系の症状や精神安定に向いています。
八綱弁証 | 裏証・虚証 |
気血水弁証 | 気虚、血虚 |
臓腑弁証 | 脾、肝 |
組成
人参、黄耆、白朮(蒼朮でも可)、茯苓、甘草、当帰、芍薬、地黄、川芎、桂皮 |
体質
体力虚弱
適応症
病後や術後の体力低下、疲労倦怠感、食欲不振、寝汗、手足の冷え、貧血に。
6.人参養栄湯(にんじんようえいとう)
十全大補湯と同じく、[気血]を補う処方です。より呼吸器系の症状や精神安定に向いています。そのため、慢性の咳や痰の改善、かぜをひきにくくする、不眠、多夢などの症状がある場合に使われます。
八綱弁証 | 裏証・寒証・虚証 |
気血水弁証 | 気虚、血虚 |
臓腑弁証 | 脾、心、肺、肝 |
組成
人参、黄耆、白朮(蒼朮でも可)、茯苓、甘草、当帰、芍薬、地黄、桂皮、陳皮(橘皮でも可)、遠志、五味子 |
体質
体力虚弱
適応症
病後や術後の体力低下、疲労倦怠感、食欲不振、寝汗、手足の冷え、貧血に。
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