清熱剤の漢方薬|東洋医学の薬剤
清熱剤一覧
清熱剤(せいねつざい)とは、裏熱証の不調に対して、熱を取り除いて改善する漢方薬です。漢方薬にはいろいろな効能があるので、分類方法は場合によって違いがある場合があります。生薬の組み合わせも異なる場合が多々あります。また、副作用や組み合わせによる注意点がある場合がありますがここには記載しておりません。実際に使用する場合は、必ず専門の医師に相談してお使いください。
※図や表以外で、東洋医学の言葉は全て[ ]の中に表しています。例えば、[心]は東洋医学での[心](しん)を表し、普通に心と書いてある場合は、通常の「こころ」を表しているとお考え下さい。そして[ ]内の言葉はまとめて東洋医学の言葉一覧のページで意味を調べられます。
目次
1.温清飲(うんせいいん)
慢性的な炎症に向いています。特に皮膚の炎症に用いられます。四物湯に黄連解毒湯を少し混ぜたものです。四物湯が潤すことによって[血虚]による皮膚のかさつきやツヤの悪さを改善します。黄連解毒湯によって皮膚の炎症を抑えます。黄連解毒湯を単独で用いるより炎症作用は弱いです。皮膚以外にも慢性の炎症がある場合に使われます。
八綱弁証 | 裏証・熱証・虚証 |
気血水弁証 | 血熱、血虚 |
臓腑弁証 | 肝、心 |
組成
地黄、当帰、芍薬、川芎、黄連、黄苓、黄柏、山梔子 |
体質
体力中等度
適応症
皮膚がかさかさで色つやが悪い、のぼせ、といった症状がある人に向いています。そのような人の月経不順、月経困難、血の道症(女性ホルモンのバランスが原因の精神的・身体的症状)、更年期障害、神経症、湿疹、皮膚炎に。
2.黄苓湯(おうごんとう)
[実熱]による消化器の炎症に使われます。腹痛と激しい下痢を繰り返したり、肛門が焼け付くように痛い、大便の臭みが強いなどの症状があります。
八綱弁証 | 裏証・熱証 |
気血水弁証 | – |
臓腑弁証 | 脾 |
組成
黄苓、芍薬、甘草、大棗 |
体質
体力中等度
適応症
腹痛、みぞおちのつかえ、寒気、発熱といった症状がある人に向いています。そのような人の下痢、胃腸炎に。
3.黄連阿膠湯(おうれんあきょうとう)
[陰虚]を改善し、熱感や興奮を抑える処方です。加齢、過労などで[陰虚]が進み、乾燥、ほてり、口の渇き、のぼせなどの症状がある場合に使われます。不眠や落ち着かないといった精神的な症状にも。
八綱弁証 | 裏証・熱証・虚証・陰虚 |
気血水弁証 | 血虚 |
臓腑弁証 | 心、腎 |
組成
黄連、黄苓、芍薬、阿膠、卵黄 |
体質
体力虚弱
適応症
のぼせ、胸苦しい、不眠といった症状がある人に向いています。そのような人の鼻血、かさかさした湿疹や皮膚炎、皮膚のかゆみに。
4.黄連解毒湯(おうれんげどくとう)
体の熱感、炎症、興奮などの[実熱]に用いる基本的な処方です。熱感の症状はのぼせ、顔色が赤いなど。炎症は口内炎、鼻血、湿疹、化膿、強いかゆみなど。そして精神的にイライラ、落ち着かない、不眠、過食などがある場合に用います。
八綱弁証 | 裏証・熱証・実証 |
気血水弁証 | 血熱 |
臓腑弁証 | 心、脾、肺 |
組成
黄連、黄苓、黄柏、山梔子 |
体質
体力中等度以上
適応症
のぼせ、顔色赤い、いらいら、落ち着きがない、といった症状がある人に向いています。そのような人の鼻血、不眠症、神経症、胃炎、二日酔い、血の道症、めまい、動悸、更年期障害、湿疹、皮膚炎、皮膚のかゆみ、口内炎に。
5.乙字湯(おつじとう)
便秘傾向のある人の肛門疾患に使われます。[血]の流れをよくして腫れと炎症を抑えます。
八綱弁証 | 裏証・熱証・実証 |
気血水弁証 | 気陥、瘀血 |
臓腑弁証 | 肺、肝 |
組成
当帰、柴胡、黄苓、甘草、大黄、升麻 |
体質
体力中等度以上
適応症
大便が硬い、便秘といった症状がある人に向いています。そのような人のいぼ痔、切れ痔、軽度の脱肛に。
6.甘草湯(かんぞうとう)
甘草を単独で使用するものです。咽頭痛とせきを改善するために多く処方されます。継続的に使用する場合は一日3g以内にした方がいいです。
八綱弁証 | 裏証・表証・熱証 |
気血水弁証 | – |
臓腑弁証 | 肺 |
組成
甘草 |
体質
–
適応症
激しい咳、のどの痛み、口内炎、しわがれ声、外用にて痔や脱肛の痛みに。
7.桔梗湯(ききょうとう)
八綱弁証 | 裏証・熱証・実証 |
気血水弁証 | 水滞 |
臓腑弁証 | 肺 |
組成
桔梗、甘草 |
体質
–
適応症
のどが腫れて痛む、咳といった症状がある人に向いています。そのような人の扁桃炎、扁桃周囲炎、膿のような痰を伴う咳に。
8.響声破笛丸(きょうせいはてきがん)
声を酷使する人に向いています。声を使いすぎることでのかすれ、のどの違和感に良いです。歌手、教師、政治家など日ごろから声を使う人のメンテナンスにも用いられます。[気虚]がある人は悪化する場合があるので、麦門冬湯の方が向きます。
八綱弁証 | 裏証・熱証・実証 |
気血水弁証 | 気滞、水滞 |
臓腑弁証 | 肺 |
組成
連翹、甘草、桔梗、薄荷、阿仙薬、縮砂、川芎、訶子、(大黄) |
体質
–
適応症
しわがれ声、のどの不快感に。
9.駆風解毒湯(くふうげどくとう)
牛蒡子、連翹がのどの炎症を抑えて痛みを止めてくれます。のどに当たるようにゆっくりと服用します。
八綱弁証 | 表証・熱証・実証 |
気血水弁証 | 血熱 |
臓腑弁証 | 肺 |
組成
防風、牛蒡子、連翹、荊芥、羌活、甘草、桔梗、石膏 |
体質
–
適応症
のどが腫れて痛む場合の、扁桃炎、扁桃周囲炎に。
10.荊芥連翹湯(けいがいれんぎょうとう)
柴胡清肝湯と同様に、神経過敏の場合の、慢性炎症を繰り返す人に向いています。炎症の症状としては、鼻炎、副鼻腔炎、中耳炎、湿疹、皮膚炎などで、主に頭部の炎症に向きます。柴胡清肝湯より鼻炎や皮膚炎に向いています。不安、抑うつなどの神経症にも向きます。
八綱弁証 | 裏証・熱証・実証 |
気血水弁証 | 血熱 |
臓腑弁証 | 肺、肝 |
組成
当帰、荊芥、芍薬、防風、川芎、枳実(または枳殻)、甘草、黄苓、白芷、桔梗、山梔子、柴胡、連翹、(薄荷、地黄、黄連、黄柏) |
体質
体力中等度以上
適応症
皮膚の色が浅黒い、手足の裏に脂汗をかきやすい、腹壁(ふくへき:内臓を囲んでいる壁)が緊張している、といった症状がある人に向いています。そのような人の蓄膿症、慢性鼻炎、慢性扁桃炎、にきびに。
11.五虎湯(ごことう)
せきに使用される麻杏甘石湯に桑白皮を加えた処方です。桑白皮は[肺]の熱、痰、むくみを取り除きます。そのため、麻杏甘石湯よりせきを止める作用と、去痰作用が強くなります。
八綱弁証 | 裏証・熱証・実証 |
気血水弁証 | 気逆、津虚 |
臓腑弁証 | 肺 |
組成
麻黄、杏仁、石膏、甘草、桑白皮 |
体質
体力中等度以上
適応症
咳が強く出る場合の、気管支ぜんそく、気管支炎、小児ぜんそく、かぜ、痔の痛みに。
12.五物解毒散(ごもつげどくさん)
八綱弁証 | 裏証・熱証・実証 |
気血水弁証 | 血熱 |
臓腑弁証 | 肺 |
組成
十薬、金銀花、荊芥、川芎、大黄 |
体質
体力中等度以上
適応症
赤くはれてかゆみのある湿疹、皮膚炎に。
13.柴胡清肝湯(さいこせいかんとう)
神経過敏の場合の、慢性炎症を繰り返す人に向いています。慢性炎症は扁桃炎や中耳炎などの頭部の炎症が主です。神経過敏の症状の一例は、両腹直筋の緊張、肋骨の下の圧痛、くすぐったがりなど。
八綱弁証 | 裏証・表証・熱証 |
気血水弁証 | 気滞、血虚、血熱 |
臓腑弁証 | 肝、肺 |
組成
柴胡、当帰、芍薬、川芎、地黄、黄連、黄苓、黄柏、山梔子、栝楼根、桔梗、薄荷、連翹、牛蒡子、甘草 |
体質
体力中等度
適応症
神経過敏の人の、神経症、慢性扁桃炎、湿疹、皮膚炎に。
14.三黄散(さんおうさん)
八綱弁証 | 裏証・熱証・実証 |
気血水弁証 | 血熱 |
臓腑弁証 | 心 |
組成
大黄末、黄苓末、黄連末 |
体質
体力中等度以上
適応症
のぼせ気味、顔面紅潮、みぞおちのつかえ、便秘といった症状がある人に向いています。そのような人の高血圧の随伴症状(肩こり、耳鳴り、頭思、不眠、不安)、鼻血、痔出血、更年期障害、血の道症(女性ホルモンのバランスが原因の精神的・身体的症状)に。
15.三黄瀉心湯(さんおうしゃしんとう)
黄連解毒湯と同様に、体の熱感、炎症、興奮などの[実熱]に用います。黄連解毒湯の症状に便秘がプラスされた場合に向きます。
八綱弁証 | 裏証・熱証・実証 |
気血水弁証 | 血熱 |
臓腑弁証 | 心 |
組成
黄連、黄苓、大黄 |
体質
体力中等度以上
適応症
のぼせ気味、顔面紅潮、精神不安、みぞおちのつかえ、便秘といった症状がある人に向いています。そのような人の高血圧の随伴症状(肩こり、耳鳴り、頭思、不眠、不安)、鼻血、痔出血、更年期障害、血の道症(女性ホルモンのバランスが原因の精神的・身体的症状)に。
16.三物黄苓湯(さんもつおうごんとう)
[気血]が消耗して、手足がほてり、夜に悪化しやすく眠れない場合に用いられます。苦参にはかゆみを抑える作用があるため、かゆみを伴う湿疹や皮膚炎にも使われます。苦参はトリコモナス膣炎にも外用で使われてきました。
八綱弁証 | 裏証・熱証・虚証・陰虚 |
気血水弁証 | 血熱 |
臓腑弁証 | 心 |
組成
黄苓、苦参、地黄 |
体質
体力中等度以下
適応症
手足にほてりがある人の、湿疹、皮膚炎、手足のあれ、不眠に。
17.十味敗毒湯(じゅうみはいどくとう)
桜皮は[瘀血]の除去に優れ、皮膚炎や外傷に使われます。十味敗毒湯は皮膚のはれ、赤み、かゆみ、化膿などの症状に。
八綱弁証 | 表証・熱証・実証 |
気血水弁証 | – |
臓腑弁証 | 肺 |
組成
柴胡、桜皮(または樸樕)、桔梗、川芎、茯苓、独活、荊芥、防風、生姜、甘草、(連翹) |
体質
体力中等度
適応症
化膿性皮膚疾患、急性皮膚疾患の初期、じんましん、湿疹、皮膚炎、水虫に。
18.辛夷清肺湯(しんいせいはいとう)
慢性鼻炎や副鼻腔炎のための処方です。葛根湯加川芎辛夷も似た処方ですが、辛夷清肺湯の方が消炎作用が強いです。
八綱弁証 | 裏証・熱証・実証 |
気血水弁証 | – |
臓腑弁証 | 肺 |
組成
黄苓、石膏、知母、山梔子、升麻、麦門冬、百合、枇杷葉、辛夷 |
体質
体力中等度以上
適応症
濃い鼻水、熱感がある場合の、鼻づまり、慢性鼻炎、蓄膿症に。
19.清心蓮子飲(せいしんれんしいん)
精神不安に泌尿器の不調がある場合の処方です。多夢、焦りなどでよく眠れず、夜にトイレに何度も行く場合などにも使われます。
八綱弁証 | 裏証・熱証・実証・虚証・陰虚 |
気血水弁証 | 気虚 |
臓腑弁証 | 心、腎 |
組成
黄苓、地骨皮、車前子、蓮肉、茯苓、人参、黄耆、麦門冬、甘草 |
体質
体力中等度以下
適応症
胃腸が弱い、全身倦怠感、口や舌が乾く、尿が出ししぶるといった症状がある人に向いています。そのような人の残尿感、頻尿、排尿痛、尿のにごり、排尿困難、おりものに。
20.清肺湯(せいはいとう)
[肺]の炎症を冷まし、気道の分泌液を増やして痰を切れやすくし、咳を鎮めてくれます。
八綱弁証 | 裏証・熱証・実証 |
気血水弁証 | – |
臓腑弁証 | 肺 |
組成
黄苓、山梔子、杏仁、桔梗、桑白皮、天門冬、麦門冬、竹茹、貝母、陳皮、茯苓、当帰、五味子、生姜、大棗、甘草 |
体質
体力中等度
適応症
痰が多くて切れにくい咳、気管支炎に。
21.排膿散及湯(はいのうさんきゅうとう)
排膿散と排膿湯を合わせた処方です。炎症部分の[気血]の流れをよくし排膿します。排膿散と同様、炎症の初期段階で使用します。炎症が強すぎる場合は、消炎作用が強い処方と併用します。
八綱弁証 | 裏証・表証・熱証 |
気血水弁証 | 気滞、水滞、血虚 |
臓腑弁証 | 肺、脾 |
組成
桔梗、芍薬、甘草、大棗、枳実、生姜 |
体質
–
適応症
患部が発赤し、腫れや痛みを伴う化膿症、面疔(めんちょう)、腫症などに。
22.排膿湯(はいのうとう)
炎症部分の[気血]の流れをよくし排膿し、炎症を冷まして痛みを和らげる処方です。炎症作用は軽いので、局部炎症に向き、炎症が広がっているときは向きません。
八綱弁証 | 裏証・表証・熱証 |
気血水弁証 | 気虚 |
臓腑弁証 | 肺、脾 |
組成
甘草、桔梗、生姜、大棗 |
体質
体力中等度以下
適応症
化膿性皮膚疾患、歯肉炎、扁桃炎の初期や軽度のものに。
23.白虎加桂枝湯(びゃっこかけいしとう)
白虎湯に桂皮を加えた処方です。同じく[実熱]を冷ましますが、身体の熱感があるものの、体表部には悪寒を感じる場合に向きます。そのため、口の渇きやほてりなどの体内の[実熱]の症状にプラスして、体表部の[寒邪]による筋肉痛、関節痛、湿疹を同時に改善してくれます。
八綱弁証 | 裏証・熱証・実証 |
気血水弁証 | 津虚 |
臓腑弁証 | 肺、脾 |
組成
石膏、知母、粳米、甘草、桂皮 |
体質
体力中等度以上
適応症
のどの渇き、ほてり、湿疹、皮膚炎、皮膚のかゆみに。
24.白虎加人参湯(びゃっこかにんじんとう)
白虎湯に人参をプラスしたものです。白虎湯と同じく身体の[実熱]を冷ましますが、より口の渇きが強く、体の水分が不足している場合に使います。熱中症や脱水症状がある場合などにも用いられます。[気虚]が強く、胃腸虚弱の人の夏バテには清暑益気湯が向きます。
八綱弁証 | 裏証・熱証 |
気血水弁証 | 気虚、津虚 |
臓腑弁証 | 肺、脾 |
組成
石膏、知母、粳米、甘草、人参 |
体質
体力中等度以上
適応症
のどの渇き、ほてり、湿疹、皮膚炎、皮膚のかゆみに。
25.白虎湯(びゃっことう)
[実熱]を冷ます基本的な処方です。黄連解毒湯も同じく[実熱]を冷ます基本処方です。二つの違いは、黄連解毒湯は水も同時に取り除き体を乾燥させるのに対し、白虎湯は乾燥させることはありません。
八綱弁証 | 裏証・熱証・実証 |
気血水弁証 | 津虚 |
臓腑弁証 | 肺、脾 |
組成
石膏、知母、粳米、甘草 |
体質
体力中等度以上
適応症
のどの渇き、ほてり、湿疹、皮膚炎、皮膚のかゆみに。
26.麻杏甘石湯(まきょうかんせきとう)
麻黄湯の桂皮を石膏に替え、消炎作用を強くした処方です。古くから気管支炎やぜんそくに使われてきました。主に感染症の初期の、発汗、発熱が軽減した後に使用します。
八綱弁証 | 表証・熱証・実証 |
気血水弁証 | 気逆、津虚 |
臓腑弁証 | 肺 |
組成
麻黄、杏仁、甘草、石膏 |
体質
体力中等度以上
適応症
咳が出て、時にのどが渇く症状がある人の、気管支ぜんそく、小児ぜんそく、気管支炎、かぜ、痔の痛みに。
27.竜胆瀉肝湯(りゅうたんしゃかんとう)
生殖系、泌尿器系の炎症の処方です。
八綱弁証 | 裏証・熱証・実証 |
気血水弁証 | 水滞 |
臓腑弁証 | 肝 |
組成
竜胆、黄苓、山梔子、沢瀉、木通、車前子、当帰、地黄、甘草 |
体質
体力中等度以上
適応症
下腹部に熱感や痛みがある人の、排尿痛、残尿感、尿のにごり、おりもの、頻尿に。
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