和解剤の漢方薬|東洋医学の薬剤
和解剤一覧
和解剤(わかいざい)とは、臓腑間の調和や陰陽のバランス改善に使用する漢方薬です。漢方薬にはいろいろな効能があるので、分類方法は場合によって違いがある場合があります。生薬の組み合わせも異なる場合が多々あります。また、副作用や組み合わせによる注意点がある場合がありますがここには記載しておりません。実際に使用する場合は、必ず専門の医師に相談してお使いください。
※図や表以外で、東洋医学の言葉は全て[ ]の中に表しています。例えば、[心]は東洋医学での[心](しん)を表し、普通に心と書いてある場合は、通常の「こころ」を表しているとお考え下さい。そして[ ]内の言葉はまとめて東洋医学の言葉一覧のページで意味を調べられます。
目次
1.黄連湯(おうれんとう)
半夏瀉心湯の黄苓を桂皮に替えた処方です。半夏瀉心湯の症状よりも、胸部の熱感やあせりが強い場合に黄連湯に変更することがあります。基本的には胃腸薬と鎮静薬の効果を持ちます。胸部の熱感や気持ちの興奮、胸苦しさ、口内炎などがある一方、胃腸の働きが低下して、食欲不振、吐き気、嘔吐、胃痛などがある場合に使います。
八綱弁証 | 裏証・寒証・熱証・実証 |
気血水弁証 | 気逆 |
臓腑弁証 | 脾 |
組成
黄連、乾姜、桂皮、半夏、甘草、人参、大棗 |
体質
体力中等度
適応症
胃の中の停滞感や重圧感、食欲不振、吐き気や嘔吐といった症状がある人に向いています。そのような人の胃痛、急性胃炎、二日酔い、口内炎に。
2.加味逍遙散(かみしょうようさん)
逍遙散に牡丹皮と山梔子を加えた処方です。女性の精神症状と月経の調整に用いられます。特にPMSと更年期障害に使われます。のぼせ、ほてりが強い場合は、逍遙散より加味逍遙散が使われます。
八綱弁証 | 裏証・熱証・実証・虚証 |
気血水弁証 | 気滞、瘀血、血虚 |
臓腑弁証 | 肝、脾 |
組成
柴胡、当帰、芍薬、茯苓、白朮(蒼朮でも可)、甘草、生姜、薄荷、牡丹皮、山梔子 |
体質
体力中等度以下
適応症
のぼせ感、肩こり、疲れやすい、精神不安や苛立ちなどの精神神経症状、便秘傾向のある人に向いています。そのような人の冷え性、虚弱体質、月経不順、月経困難、更年期障害、血の道症(女性ホルモンのバランスが原因の精神的・身体的症状)、不眠症に。
3.加味逍遙散合四物湯(かみしょうようさんごうしもつとう)
加味逍遙散に四物湯が組み合わさったものです。加齢や心労によって、[血虚]が進行した場合に用いられます。
八綱弁証 | 裏証・熱証・実証・虚証 |
気血水弁証 | 気滞、血虚、瘀血 |
臓腑弁証 | 肝、脾 |
組成
柴胡、当帰、芍薬、茯苓、白朮(蒼朮でも可)、甘草、生姜、薄荷、牡丹皮、山梔子、地黄、川芎 |
体質
体力中等度以下
適応症
皮膚が荒れてカサカサ・色つやが悪い・かゆみがある人、肩こり、疲れやすい、精神不安や苛立ちなどの精神神経症状、便秘といった症状がある人で胃腸障害が無い人に向いています。そのような人の湿疹、皮膚炎、シミ、冷え性、虚弱、月経不順、月経困難、更年期障害、血の道症(女性ホルモンのバランスが原因の精神的・身体的症状)に。
4.甘草瀉心湯(かんぞうしゃしんとう)
半夏瀉心湯の甘草の量を増やしたものです。半夏瀉心湯と同じく、みぞおちがつかえる、吐き気、下痢などの症状がある場合に向いています。増量されている甘草は、精神安定のためにも用いられます。そのため、不眠、イライラ、不安などの精神症状が強い場合は、半夏瀉心湯より甘草瀉心湯が向きます。
八綱弁証 | 裏証・寒証・熱証・実証・虚証 |
気血水弁証 | 気逆、気虚 |
臓腑弁証 | 脾 |
組成
半夏、黄苓、黄連、乾姜、人参、大棗、甘草 |
体質
体力中等度
適応症
みぞおちがつかえる、イライラ、下痢、吐き気、お腹が鳴るといった症状がある人に向いています。そのような人の胃腸炎、口内炎、口臭、不眠症、神経症、下痢に。
5.柴陥湯(さいかんとう)
小柴胡湯に栝楼仁と黄連を加えたものです。栝楼仁は潤す作用、黄連は消炎作用があります。小柴胡湯を用いる症状である脇腹からみぞおちにかけて苦しい、食欲不振、口苦などの症状に加えて、痰が切れにくい強い咳、胸痛、気管支炎などの症状がある場合に使います。
八綱弁証 | 熱証・半表半裏 |
気血水弁証 | 気滞、水滞 |
臓腑弁証 | 肝、肺、脾 |
組成
柴胡、黄苓、人参、甘草、大棗、生姜、半夏、黄連、栝楼仁 |
体質
体力中等度以上
適応症
わき腹からみぞおちにかけて苦しい、食欲不振、口が苦い、舌が[白苔]、といった症状がある人に向いています。そのような人のせき(痰がきれにくい)、胸痛、気管支炎に。
6.柴胡加竜骨牡蠣湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)
ストレスなどが原因の精神症状に使われます。交感神経の過度の緊張による、不眠、神経症などに。竜骨と牡蠣を含むほかの処方に桂枝加竜骨牡蠣湯がありますが、それよりも喜怒哀楽がはっきりして不安が激しい場合に用いられます。
八綱弁証 | 熱証・半表半裏 |
気血水弁証 | 気滞 |
臓腑弁証 | 肝、心 |
組成
柴胡、桂皮、茯苓、半夏、竜骨、牡蠣、人参、生姜、大棗、(黄苓、黄連、甘草) |
体質
体力中等度以上
適応症
精神不安、不眠、便秘といった症状がある人に向いています。そのような人の高血圧に伴う動悸・不安・不眠の症状、神経症、更年期障害、小児夜泣きに。
7.柴胡桂枝乾姜湯(さいこけいしかんきょうとう)
かぜの後期になってもすっきり治らないときに使います。悪寒、熱感、発汗、口の渇き、動悸などの症状があります。また、鎮静作用があり、胃腸虚弱や[気虚]タイプの人の様々な神経症に向いています。不安、不眠、神経過敏、寝汗、動悸などがあげられます。
八綱弁証 | 半表半裏 |
気血水弁証 | 気滞、津虚 |
臓腑弁証 | 肝、脾 |
組成
柴胡、黄苓、桂皮、乾姜、栝楼根、牡蠣、甘草 |
体質
体力中等度以下
適応症
冷え性、貧血、神経過敏、動悸、息切れ、寝汗、頭部の発汗、口の渇きといった症状がある人に向いています。そのような人の更年期障害、血の道症(女性ホルモンのバランスが原因の精神的・身体的症状)、不眠症、神経症、かぜの後期症状、気管支炎に。
8.柴胡桂枝湯(さいこけいしとう)
小柴胡湯と桂枝湯を組み合わせたものです。かぜの中期から後期の症状に使われます。また、消炎作用があり、胃痛、胆嚢炎、胆石症、神経性胃炎の食欲不振にも使われます。
八綱弁証 | 半表半裏 |
気血水弁証 | 気滞 |
臓腑弁証 | 肝、脾 |
組成
柴胡、黄苓、桂皮、芍薬、半夏、人参、甘草、大棗、生姜 |
体質
体力中等度以下
適応症
腹痛があり、時に微熱・寒気・頭痛・吐き気といった症状がある人に向いています。そのような人の胃腸炎、かぜの中期から後期の症状に。
9.柴朴湯(さいぼくとう)
小柴胡湯と半夏厚朴湯を合わせたものです。より[気滞]に対して効果的です。咽頭、胸部、脇腹の[気滞]の症状に有効で、食道部の異物感、慢性の咳、痰が出にくいなどの症状に向きます。ぜんそくの人の、胸がすっきりしないときに、補助的に使用されることもあります。
八綱弁証 | 半表半裏 |
気血水弁証 | 気滞、水滞 |
臓腑弁証 | 肝、肺、脾 |
組成
柴胡、黄苓、人参、甘草、大棗、生姜、半夏、厚朴、茯苓、蘇葉 |
体質
体力中等度
適応症
気分が憂鬱、咽や食道部に異物感がある、かぜをひきやすい、時に動悸・めまい・吐き気といった症状がある人に向いています。そのような人の小児ぜんそく、ぜんそく、気管支炎、咳、不安神経症、虚弱体質に。
10.柴苓湯(さいれいとう)
小柴胡湯に五苓散を合わせたものです。[気血]の巡りを改善し、[清熱]します。炎症性疾患に用いられます。
八綱弁証 | 半表半裏 |
気血水弁証 | 気滞、水滞 |
臓腑弁証 | 肝、脾 |
組成
柴胡、黄苓、大棗、人参、甘草、生姜、半夏、沢瀉、猪苓、茯苓、白朮(蒼朮でも可)、桂皮 |
体質
体力中等度
適応症
喉が渇く、尿量が少ない、吐き気、食欲不振、むくみといった症状がある人に向いています。そのような人の水様性下痢、急性胃腸炎、食あたり、むくみに。
11.芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)
こむら返りの処方として有名です。強く収縮した筋肉の緊張を緩めて、痛みを和らげます。こむら返り以外にも、腹痛、ぎっくり腰、尿管結石の排石時の痛みなど、様々な痛みの緩和に用いられます。速効性があります。甘草が多いので、副作用が出ないように、一日1回、症状があるときのみに使用します。
八綱弁証 | 裏証 |
気血水弁証 | 血虚 |
臓腑弁証 | 肝 |
組成
芍薬、甘草 |
体質
–
適応症
筋肉の急激なけいれんを伴う痛みに向きます。こむら返り、腹痛、腰痛など。
12.生姜瀉心湯(しょうきょうしゃしんとう)
半夏瀉心湯の乾姜を減らし生姜をプラスしたものです。半夏瀉心湯と同じくみぞおちがつかえた感じ、吐き気、下痢などの症状に向いています。生姜は乾姜よりも吐き気や嘔吐を止める作用が強いです。
八綱弁証 | 裏証・寒証・熱証・実証・虚証 |
気血水弁証 | 気逆、水滞 |
臓腑弁証 | 脾 |
組成
半夏、黄連、黄苓、乾姜、生姜、人参、大棗、甘草 |
体質
体力中等度
適応症
みぞおちがつかえた感じ、吐き気、げっぷといった症状がある人に向いています。そのような人の食欲不振、胸やけ、嘔吐、下痢、胃腸炎、口臭に。
13.小柴胡湯(しょうさいことう)
柴胡と最初につく漢方は、小柴胡湯をベースにしていることが殆どです。小柴胡湯は柴胡の量が多めに作られています。感染症の中期から後期にかけての消炎、鎮静に使われます。口苦、みぞおちの下が張るといった症状がある中で、発熱と寒気を繰り返し胃腸の症状もある場合や、精神状態を落ち着かせる作用があります。アレルギー性疾患にも用いられます。
八綱弁証 | 半表半裏 |
気血水弁証 | 気滞 |
臓腑弁証 | 肝、脾 |
組成
柴胡、黄苓、人参、甘草、大棗、生姜、半夏 |
体質
体力中等度
適応症
脇腹からみぞおちにかけて苦しい、食欲不振、口の苦味、舌の[白苔]、といった症状がある人に向いています。そのような人の吐き気、胃炎、胃痛、胃腸虚弱、疲労感、かぜの後期の症状に。
14.小柴胡湯化桔梗石膏(しょうさいことうかきっきょうせっこう)
小柴胡湯に桔梗と石膏を加えたものです。
八綱弁証 | 熱証・半表半裏 |
気血水弁証 | 気滞 |
臓腑弁証 | 肝、脾、肺 |
組成
柴胡、黄苓、人参、甘草、大棗、生姜、半夏、桔梗、石膏 |
体質
体力がある人
適応症
脇腹からみぞおちにかけて苦しい、食欲不振、口の苦味、舌の[白苔]、といった症状がある人に向いています。そのような人の喉の痛み、扁桃炎、扁桃周囲炎に。
15.逍遙散(しょうようさん)
PMSや更年期障害などの、女性の月経と、精神症状に使われる処方です。加味逍遙散に配合されている山梔子が無いため、腸管膜静脈硬化症のリスクが無く、長期の利用がしやすいです。ほてり、のぼせが強い場合は加味逍遙散の方が効果的です。
八綱弁証 | 裏証・実証・虚証 |
気血水弁証 | 気滞、血虚、瘀血 |
臓腑弁証 | 肝、脾 |
組成
柴胡、当帰、芍薬、茯苓、白朮(蒼朮でも可)、甘草、生姜、薄荷 |
体質
体力中等度以下
適応症
肩こり、疲れやすい、精神不安、便秘といった症状がある人に向いています。そのような人の冷え性、虚弱体質、月経不順、月経困難、更年期障害、血の道症(女性ホルモンのバランスが原因の精神的・身体的症状)、不眠症、神経症に。
16.大柴胡湯(だいさいことう)
わき腹からみぞおちの[気滞]を改善し、[気]の巡りをよくし、熱も取り除きます。小柴胡湯より[気滞]の改善効果が強いです。胃炎、胆石症、胆嚢炎などの消炎にも使われます。イライラ、不眠などの精神の鎮静にも使われます。
八綱弁証 | 熱証・半表半裏・実証 |
気血水弁証 | 気滞 |
臓腑弁証 | 肝、脾 |
組成
柴胡、黄苓、芍薬、半夏、枳実、大黄、大棗、生姜 |
体質
体力がある人
適応症
脇腹からみぞおちにかけて苦しい、便秘といった症状がある人に向いています。そのような人の胃炎、便秘、高血圧や肥満による肩こり・頭痛・神経症・肥満症に。
17.当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)
[血虚]と[水滞]の両方の症状がある場合に使われます。この場合は冷えが強く、見た目は色白でむくみのある人が多いです。冷えの自覚がある、月経不順、月経痛、不妊症、流産後、産後の不調などに使われます。
八綱弁証 | 裏証・寒証・虚証 |
気血水弁証 | 血虚、瘀血、水滞 |
臓腑弁証 | 肝、脾 |
組成
当帰、芍薬、川芎、白朮(蒼朮でも可)、茯苓、沢瀉 |
体質
体力虚弱
適応症
冷え性、貧血、疲労しやすい、下腹部痛、頭重、めまい、肩こり、耳鳴り、動悸といった症状がある人に向いています。そのような人の月経不順、月経異常、月経痛、更年期障害、めまい、たちくらみ、腰痛、足腰の冷え、しもやけ、むくみ、シミ、耳鳴りなどに。
18.半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう)
主に、みぞおちがつかえた感じ、吐き気、下痢のいずれかの症状がみられるときに使用します。消化機能が低下し、みぞおちで停滞することにより、げっぷや食欲不振の症状が出ます。つかえているために熱が上で停滞し、口内炎や胸やけといった症状が出ます。そういった場合に使われる処方です。
八綱弁証 | 裏証・寒証・熱証・実証・虚証 |
気血水弁証 | 気逆 |
臓腑弁証 | 脾 |
組成
半夏、黄苓、黄連、乾姜、人参、大棗、甘草 |
体質
体力中等度
適応症
みぞおちがつかえた感じ、[悪心]、嘔吐、食欲不振、お腹が鳴る、軟便か下痢、といった症状がある人に向いています。そのような人の急性・慢性胃腸炎、消化不良、胃下垂、神経性胃炎、胃弱、二日酔い、げっぷ、胸やけ、口内炎、神経症などに。
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