腎・膀胱の働き|東洋医学と体・五臓六腑
腎・膀胱について|五臓六腑
ここでは五行説を基にした東洋医学の概念の一部である、五臓六腑の[腎]・[膀胱]の機能についてお伝えします。西洋医学でいう臓器の腎臓と膀胱の機能よりも広い意味合いがあります。ここまでに必要な東洋医学の基本的な内容は下記のリンクをご覧ください。
※図や表以外で、東洋医学の言葉は全て[ ]の中に表しています。例えば、[心]は東洋医学での[心](しん)を表し、普通に心と書いてある場合は、通常の「こころ」を表しているとお考え下さい。そして[ ]内の言葉はまとめて東洋医学の言葉一覧のページで意味を調べられます。
目次
[腎]・[膀胱]が対応する元素
五行 | 木 | 火 | 土 | 金 | 水 |
五臓 | 肝 | 心 | 脾 | 肺 | 腎 |
五腑 | 胆 | 小腸 | 胃 | 大腸 | 膀胱 |
元素は[水]
上の表のように、[腎]は、[水]が持つ、生命エネルギーの性質を持ちます。植物で例えると、これから成長していくためのエネルギーがたくさん詰まった種になります。その[水]に対応する[臓]の[腎]とそれを補佐する[腑]の[膀胱]の働きをみていきます。
[腎]の働き
蔵精:[精]を貯蔵する
[腎]の主な働きは、[精]を貯蔵することです。[精]とは生命活動の基本物質です。[精]については詳しくは下記をご覧ください。
成長・発育を主る
[精]を貯蔵するということは、まず、成長や発育に関わります。生まれたときは、私たちは両親の[精]を受け継いでいます。それを先天の[精]といいます。この先天の[精]のおかげで、生まれてから体が大きくなり、歩くようになり、歯が生えてきたりすることができます。
生殖を主る
生まれ持ってある先天の[精]を使いながら、食べ物などから生成される[精]を後天の[精]といいます。先天の[精]が後天の[精]で補われていくと、ある段階で[天癸](てんき)が作られます。[天癸]によって、男性は精子を作り、女性は生理になります。年を重ねるごとに[天癸]の生成が減少していきます。
老化
このように[精]は成長に必須の要素ですが、逆を言うと、[精]の減少は老化現象と密接に関連しています。[精]を保つことで、若々しくいられます。
[腎精]不足の不調
成長に関する症状(歩くのが遅い、歯が生えるのが遅い、身体が小さい、初潮が遅い)不妊、性欲減退、インポテンツ、歯が抜ける、老化現象(閉経が早い、白髪、聴力の低下、尿失禁、足腰の衰え)など |
[津液]を主る
[腎]は体内の[津液](=水分)に関して一番の権力を持ちます。体のなかの水分バランスを調整し、代謝をします。[脾]と[肺]と協力して行っています。体内に入ってきた水分の中で、必要な分は[肺]に戻され全身へ運ばれ、不要な分は[膀胱]へ行き排泄されます。
[腎気]不足の不調
尿失禁、尿に勢いが無い、尿が少ない、むくみ、など |
納気を主る
納気とは、吸う息のことです。呼吸は[肺]が一番の権力者ですが、[腎]は吸う息をサポートしています。[肺]が[清気]を[腎]に送り込んでくれ、それを引き込む働きをします。その流れが順調にいくことで、不要な水分が[膀胱]へとスムーズに流れます。
[腎気]不足の不調
息切れ、呼吸障害、深く息を吸えない、など |
骨を主り、随を生じ、脳に通じる
脳は「髄の海」と言われています。その髄は骨に貯蔵されていて、骨を養っています。そして髄は[腎]から作られます。このように、[腎]と骨、随、脳は繋がっています。[腎精]が充実していると、骨が丈夫で、記憶力もよくなります。
[腎精]不足の不調
骨がもろい、歯が抜けやすい、腰がだるい、動作がにぶい、頭がぼんやり、めまい、記憶力が悪い、など |
[腎陰]と[腎陽]
[腎]は五元素で言うと[水]に対応していて、[水]は生命の始まりの種に例えて説明してきました。また、生命活動の基本物質である[精]を貯蔵している場所であったり、[腎]は私たちの生きる上での根源的な役割を果たしています。[腎]には[腎陽]と[腎陰]があり、これらは全身の[陰陽]の根本となっています。
腎精から生まれる
東洋医学では、人体に[命門](めいもん)というものがあると考えられてきました。[腎精]は[腎]から[命門]に貯蔵され、そこから[腎陰]と[腎陽]が発生します。[腎精]から[腎]の[陰陽]が2つ生まれるようなイメージです。生命活動の根本的な部分なので、[腎陰][腎陽]の不足は、ほかの臓腑の陰陽の不足につながります。また、ほかの臓腑の陰陽不足は、[腎陰][腎陽]の不足につながります。[腎陰][腎陽]はお互いに抑制し合い、かつ依存し合い、両方のバランスがとれていることで健康が保たれます。
腎陰のはたらき
[腎陰]は体内全ての[陰液]、つまり体液や栄養物質の源です。主な働きは3つあります。
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腎陽のはたらき
[腎陽]は体内全ての[陽気]、つまり人体の生理機能の根本です。そして全身の熱源になります。[腎陽]は、[腎]の[陽気]・[元陽](げんよう)・[真陽](しんよう)・[真火](しんか)・[命門]の火などと呼ばれることもあります。主な働きは3つあります。
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[腎]の不調が現れる場所
ページ下の五行配当表をご覧ください。[腎]に対応する[五根]と[五支]に、[耳]・[二陰]・[髪]とあります。[五根]は[五臓]とつながっている体表に現れている開口部分のことです。[五支]は、[五臓]の状態が現れる体表面の場所となります。[耳]・[二陰]・[髪]は、[腎]に密接に関連していて、[腎]の不調が現れやすい場所になります。
耳
[腎]のアンバランスは、耳の不調に現れます。耳が聞こえない、耳鳴りなどです。
二陰(にいん)
二陰とは、前陰(外生殖器)と後陰(肛門)の2つのことです。[腎]のアンバランスは、排便、排尿、性交、出産に関する不調と関わります。大小便の失禁、遺精、流産などです。
髪
髪は「[血]のあまり」と言われています。[精]と[血]はもともとは同じもので、お互いに補い合う関係があります。そのため、[腎]の不調は髪にも現れます。[腎気]が充実していると、髪にコシやツヤがあり、ふさふさです。[腎気]の不足により、白髪、抜け毛、細毛、ツヤ・ハリ・コシの減少を引き起こします。
[膀胱]の働き
貯水と排泄
[腎]は経路によって[膀胱]とつながっています。[膀胱]は尿を貯蔵し、排泄するのが主な役割です。体内の水分を尿に変換させて排出するためには、[腎気]による変化させる働きが正常に働いていないといけません。[腎気]の不足は[膀胱]にも影響します。
[腎気]不足の不調
頻尿、排尿時の疼痛、尿閉、などの排尿異常 |
[腎]・[膀胱]の働きまとめ
これまでの[腎]と[膀胱]の働きをまとめた図です。
[腎]・[膀胱]に対応する心の働き
五行の中の感情の概念である[五志]は[恐]・[驚]、精神の概念である[五神]は[志]が対応しています。これらの心の働きが[腎]と[膀胱]の肉体の働きと連動していますので、詳しくはリンクをご覧ください。
五行配当表
次はこれを要チェック
[腎][膀胱]の基本が分かったら、[腎][膀胱]のアンバランスによる不調のメカニズムをチェックしてみてください。
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