Yoga

カルマとは?|ヨーガ・アーユルヴェーダ・インド哲学

タットヴァボーダ No.63-66

ヨーガやアーユルヴェーダの理論のもととなっているインド哲学「ヴェーダ」の起源は約5000年前にさかのぼります。宇宙の法則、私たちが生きている世界の本質が詰まっています。その一部をわかりやすく初心者用に説明しているものがタットヴァボーダ(Tattva Bodha)です。ヨーガ、アーユルヴェーダのもととなる基本的な考え方を理解するにあたって、とても重要です。このサイトでは、そのタットヴァボーダの内容をサンスクリット語の訳に沿いながら説明しています。グリーンで囲われている部分がサンスクリット語の日本語訳です。ここでは63章から66章にあたる、カルマとは何か?の部分を説明しています。タットヴァボーダの全体像について知りたい場合は下記をご覧ください。

インド・ヨーガ哲学

目次(63章~66章)|カルマとは?



カルマとは?

これまでのタットヴァボーダの内容とのつながりを復習します。まず、タットヴァボーダのテーマがあり、それを学ぶために必要な資質を説明しました。そしてタットヴァボーダの一番のテーマである、アートマー(自分自身、真我)にはどんな特徴があるのかを15,16章説明しました。17章以降はその特徴を1つずつ説明しています。43章からは、宇宙の構造の話になります。仕組みはどのようになっていて、どのようにできたのかを説明していきました。60章からは悟りについて63章からは、悟った人が超越するカルマとは何かの説明です。

No.63 |カルマの種類

もし、何種類のカルマがあるのかと尋ねるのなら、3つです。アーガーミ、サンチタ、プラーラブタです。

解説

インド哲学にはカルマ論というものあります。カルマ論とは、行いの結果による法則のことです。どんな小さな出来事にも原因があり、どんな行いにも結果が自分に返ってきます。私たちは生まれてから死ぬまで、常に何かを行っています。止まっているときでも臓器や思考は動いています。この数えきれない行いには常にその結果があります。行いの中には、肉体的に動くことだけでなく、思考や言葉も含まれます。すべての行いに対して結果があり、その結果は自分に等しく戻ってくるというのがカルマ論です。

2種類の行い

行いの結果は、その行いの裏にある意図で決まります。その行いには2種類あります。

①プンニャ

良い結果をもたらす行いをプンニャといいます。良い意図からの行いはプンニャとしてサンチタカルマに蓄えられています。良い意図からの行いというのは、愛やおもいやりを原動力に行うことです。そして、過去のプンニャのおかげで、今良い結果が起こっています。例えば、「急に雨が降り出してきましたが、知らない人が傘をくれ、濡れずに家に帰れました。」これは、過去の良い行いの結果です。

②パーパ

悪い結果をもたらす行いをパーパといいます。悪い意図からの行いはパーパとしてサンチタカルマに蓄えられています。悪い意図からの行いというのは、利己的な考えを原動力に行うことです。そして、過去のパーパが原因で、今悪い結果が起こっています。例えば、「今日は晴れる予定だったのに、急に雨が降り出し、新しい服もびしょびしょになって家に帰りました。」これは、過去の悪い行いの結果となります。

意図が大切

行いは同じでもその裏の意図が異なればプンニャにもパーパにもなります。例えば、「人を死なせた」という同じ行為でも、助けるために全力を尽くした医者は、その行為がプンニャになりますが、人をただ殺したとなればパーパになります。

3種類のカルマ

カルマには3種類あります。

  • アーガーミカルマ・・・サンチタカルマとしてこれから蓄えられるカルマ
  • サンチタカルマ・・・蓄積されていて、これから訪れるカルマ
  • プラーラブタカルマ・・・サンチタカルマから今すでに表れているカルマ

これらのカルマがどんなものか、具体的に説明していきます。

No.64 |アーガーミカルマ

自分自身の知識を得た後、ニャーニ(賢者)の体を通じて行われた良い、または悪い行為の結果をアーガーミカルマといいます。

解説

賢者はすでに自分自身の知識を得て、全てのカルマから自由になっていますが、この世にいる限り、行いをし続けます。良い行いも悪い行いも、全てサンチタカルマとして蓄えられます。結果はまだ訪れていなく、それがいつ現れるのかはわかりません。この、今の行いがサンチタカルマとして蓄えられている状態のカルマをアーガーミカルマといいます。これは今の行いが重要なので、自分の身の振る舞い次第で結果を変えることができます。ちなみに人間以外の生き物には自由意思がありません。そのため、行いの良い悪いを選択することができず、本能に従って生きています。そのため、動物はプンニャやパーパを蓄えることはできません。

もし、平和に生きたいと願うなら、良い行いを蓄えることに集中しなければなりません。私たちは自分の体と自分を同一視し、自分を「行い手」だと思っています。そのため、その結果の楽しさや苦しみも体験する者となります。しかし、賢者の感覚からすれば、もはや良い行い、悪い行いという概念はありません。すでに自分が「行い手である」という感覚を超越しているからです。



No.65 |サンチタカルマ

サンチタカルマとは何ですか?全ての過去世で行われた行動の結果で、まだ種の形をしていて、未来に終わりのない生を生み出すものがサンチタカルマです。

解説

私たちは何度も生まれ変わっています。そして過去世で行った数えきれない行いが記録され、銀行口座のように蓄えられています。それがいつ引き出されるかは分かりませんが、蓄えられている状態のカルマをサンチタカルマといいます。

2種類の行いの結果

①目に見える結果
1000円を友人に貸したので、次の日1000円返してくれた。

②目に見えない結果
1万円をボランティア団体に寄付した。その結果はサンチタカルマに蓄えられていて、いつどのように返ってくるかは分からない。

そのため、全ての出来事は偶然ではなく、必然で起こっていると考えます。その原因は、さっき行った行為かもしれませんし、何年も前、もしくはずっと前の過去世かもしれません。サンチタカルマは、アーガーミカルマ同様、自分の行いによって変えることができます。

No.66 |プラーラブタカルマ

プラーラブタカルマが何かと尋ねるなら、この体に生をもたらし、幸せや苦しみという形でこの世界に行いの結果をもたらし、それらを楽しむ、もしくは耐えることによってしか解消されないものが、プラーラブタカルマです。

解説

変えられないカルマ

プラーラブタカルマとは、サンチタカルマから今すでに表れているカルマで、変えることができないものです。例えば、生まれた国や時間、性別、体、家族、などがあげられます。これらはすべて過去の行いの結果です。一般的に宿命とか運命などといわれます。宇宙の法則として蓄えられたカルマが今現れています。どんなに辛い環境で生まれたとしても、それは今学ぶ必要があるから今世に現れたと考えます。一度放たれた矢は、それがどんな方向でも途中で止まることはありません。それと同じように、一度行った行為の結果は、宇宙の法則で必ず現れるようになっています。

自由意思によって対処する

このよういわれると、悪いことはすべて自分のカルマのせいだから諦めるしかない、となってしまうかもしれません。しかしインド哲学ではあきらめることを勧めているわけではありません。プラーラブタカルマは変えることができませんが、それによって現れた出来事をどうとらえるか、どう対処するかは、人間が持つ自由意思で選ぶことができます。また、全てが自分の行いの結果だと理解することで、何か他の物や他人のせいにすることがなくなり、すべての経験と自分の人生に責任をとれるようになります。そして「祈り」は良くないプラーラブタカルマを中立にしてくれます。

次の章からは、カルマから解放されるにはどうしたらいいかを説明しています。タットヴァボーダ最後の説明です。

自分自身の知識を得ること




次はこれを要チェック

タットヴァボーダ目次 ヨーガとは アーユルヴェーダの歴史 アーユルヴェーダの基本




『VEDANTA BOOK OF DEFINITIONS』 Swami Tejomayananda