油の酸化で何が起こる?|酸化した揚げ油・食用油・植物油の危険性と見分け方
酸化について
一般的に酸化とは、物質が電子を失う化学反応のことを指します。酸素がついたり、水素が奪われるといったことで反応が起こります。油も、他の物質と同じように酸化が起こります。そして酸化した油を使うことは、体にとって良くありません。ここではどうして体に良くないのか?油の酸化のメカニズムと体に良くない理由、そして酸化した油の見分け方と上手な使い方をお伝えしていきます。
目次
空気による酸化
油脂の酸化のメカニズム
基本的に油脂は、光と熱、酸素、水、金属などに触れると、活性酸素によって酸化されます。そうすると過酸化脂質というものが作られます。この過酸化脂質は体に有毒な成分で、動脈硬化の原因となると言われています。過酸化脂質の一つであるスーパーオキシドアニオンは、DNAを損傷させる、発がん性物質とされています。このように、酸化することにより、成分が変化し、体に有毒なものが発生します。
酸化しやすい油脂としにくい油脂
普通に使用しているだけでも、油脂の種類によって、酸化しやすいものとしにくいものがあります。それは油脂に含まれる脂肪酸の種類や含有量によります。基本的には、飽和脂肪酸が多いと酸化しにくく、不飽和脂肪酸が多いと酸化しやすくなります。それは油脂ごとのヨウ素価を見るのが参考になります。ヨウ素価の数値によって、乾性油(酸化しやすい)、半乾性油(普通)、不乾性油(酸化しにくい)に分かれています。ヨウ素価に関しては別途詳しく説明します。
酸化した油を肌に使用したら?
肌に使用できる、化粧品用の油脂ももちろん酸化します。酸化した油脂は色も香りもよくないので、そもそも皮膚に塗布したいと思うかが分かりませんが、もし塗布したとすると、刺激が生じたり、くすみの原因、日光に当たればシミの原因になります。様々な肌の不調につながります。肌にいいはずの脂肪酸が酸化によって変化してしまっているので、使わないでください。
加熱による酸化
揚げ物をはじめとした過熱によって起こる酸化は、さらに気をつけなければいけません。食用の場合、揚げたり炒めたり、蒸したり、材料に混ぜてオーブンで熱したり、色々な状況でそれに応じた温度に加熱されます。化粧品用の油脂も、マッサージをするときや、浸出油を作る時などに加熱する場合があります。
油脂の成分の脂肪酸の種類によって、熱によって簡単に酸化してしまうものもあれば、熱に強く、加熱しても酸化しにくいものもあります。基本的には熱を加えるということは、前述のような空気による酸化よりも、劣化を早めるので、使い方のコツを説明していきます。
加熱によって有害物質が発生するのは事実
基本的に酸化のプロセスは前述と同じです。熱や酸素をはじめとした物質によって、油脂が酸化されると過酸化脂質が発生します。特に、リノレン酸は、臨界温度以上に加熱するとアクロレインという有害物質を発生させます。またリノレン酸やリノール酸は、臨界温度以上の加熱でトランス脂肪酸へと変化します。そのため、加熱調理をする場合とは別に、商品になる前に既に高温に何度もさらされる精製されたオイルには注意が必要です。トレイン酸が混入しています。詳しくは下記の精製の項目をご覧ください。
多価不飽和脂肪酸は加熱には不向き
不飽和脂肪酸は、構造に二重結合を持つので、酸化しやすいです。特にその二重結合が多い多価不飽和脂肪酸がメインの油脂は加熱には向きません。リノレン酸は前述したようにアクロレインを発するため、フランスではリノレン酸が2%以上含まれていたら揚げ物油として許可されません。それと同じように、リノレン酸に限らず多価不飽和脂肪酸の含有が多いものは、酸化しやすいので加熱は避けたほうが無難です。
臨界温度以上に加熱してはいけない
また、加熱しようとしている油脂が、どれくらいの加熱まで耐えられるかをチェックする方法もあります。有害物質への分解がはじまらない、限界の温度です。それを臨界温度と言います。臨界温度はその油脂にどんな脂肪酸が含まれているかによって変わってきます。臨界温度以上に熱してしまうと、有害物質が発生します。
ただ、臨界温度以下で使用していても、何度も過熱したり空気に触れさせると、もちろん酸化は進みます。油脂の臨界温度によって、揚げ油に向くものもあれば、蒸したりするような少しの加熱だけなら大丈夫なもの、若しくはサラダのドレッシングのように、全く加熱はしないで使ったほうがいいものなのかを知ることができます。
油 | 臨界温度目安 |
コーン油 | 140℃ |
くるみ油 | 140℃ |
グレープシードオイル | 150℃ |
ごま油 | 150℃ |
ひまわり油 | 170℃ |
ココナッツオイル | 200℃ |
オリーブオイル | 210℃ |
ピーナッツオイル | 220℃ |
この例だと、揚げ物の温度に堪えられ、おすすめなのはオリーブオイル、ピーナッツオイルです。ココナッツオイルも温度的には耐えられますが、ココナッツオイルは飽和脂肪酸がメインで摂り過ぎには注意が必要です。揚げ物のように大量に油を使う場合にはあまりおすすめしません。
揚げ油は何度も使って大丈夫なのか?
揚げ油は何度も使っても問題ない、という人もいますし、揚げ油は2,3回しか使ってはいけない、と考える人もいます。その考えは、どちらも間違っていません。油脂が「加熱により酸化する」というのは間違いない事実です。しかし、どの時点で酸化し、有害物質が発生しているかは、加熱温度、どんな食材と一緒に使ったか、使う油脂の種類、油脂の保存状態など様々な要因によって変わってくるのです。そのため一概に、揚げ油を何回使ったから酸化している、とは言えません。正確に知るには過酸化物価や酸価を測定しなければなりませんが、普通はそこまでできません。
酸化している油の見分け方5つのポイント
ではどのように酸化を見分ければいいのでしょうか?酸化した油脂に見られる変化は次のようになります。
1.煙が出る
普通揚げ物で使用する油の発煙点は240℃以上の場合が多いです。揚げ物は通常高くでも200℃以下なので、揚げ物をしている時に煙が出ることはありません。しかし、酸化がはじまると、過酸化脂質が発生し、それがさらに分解して遊離脂肪酸などの化合物が発生します。これらの物質の発煙点が低いことから、通常の油脂の発煙点より低い温度(170℃位など)で煙が出ではじめたら、油が酸化している可能性があります。
2.温度が下がった時に粘りが出る
酸化のプロセスでは、油脂内の脂肪酸に酸素が付加して、より大きな分子が出来上がります。そのため、酸化したときにできる化合物が発生していると、粘りが出てきます。そのことから、油を冷ました時の粘りは、酸化の指標にすることができます。
3.泡が消えにくい
油の消えにくさも、粘りと同じ原理で酸化の指標になります。粘りがあるということは、揚げ物時に生じる泡が、消えにくくなります。新しい油では、泡ができてもすぐ消えます。
4.色が濃くなる
油脂の酸化が進むと、色が濃く、褐色になっていきます。特に加熱することのない、化粧品やマッセージオイルとしての油脂は、1~3のような判断ができないので、色が参考になります。
5.不快なにおいがする
油脂の酸化が進むと、不快なにおいが発生してきます。色と同様、特に加熱することのない、化粧品やマッセージオイルとしての油脂は、臭いも参考になります。
それでも本当に酸化しているのか?
上記のような状態が見られても、本当に酸化していて有毒物質が発生しているかは、実際に検査をしないと分かりません。でももしこの状態で酸化していないとしても、それを使い続けて本当に酸化したときとの違いを自分で見分ける分かりやすい指標はありません。そういったことから、このような状態になった油脂は使わないのが体のためにはいいのかもしれません。
酸化した油を避けるポイントまとめ
油の酸化は体にとって良くないことだと分かっていただけたかと思います。最後に酸化した油を避けるポイントをまとめます。
1.油脂は、高温多湿を避けた冷暗所に保管する。2.使用期間を守る。3.揚げ物に最適な油は、オリーブオイルとピーナッツオイル。4.不飽和脂肪酸がメインの油脂は加熱しないのがベター。5.臨界温度を守って使用する。6.油脂が酸化していないか5つの項目をチェックしながら使う。 |
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